その数分違いで、今度は仲村渠(なかんだかり)も、何故だか当然のような顔でやって来た。

 仲村渠獣医は、咽び泣く仲西青年を無視し「このたびは、本当にお疲れ様でした」と、珈琲とお茶の袋を手土産に手渡してきた。続いて数分の誤差でやって来たのは古賀で、こちらは仲西を見て、つられたように涙腺を緩ませた。

 シェリーがいなくなったというのに、それからも彼らは、相変わらず萬狩宅へやって来た。

 仲西は職場が近い事もあってか、週に三回は、昼休憩も兼ねて萬狩宅を訪問してくる。更に翌週の月曜日には、仲村渠と古賀も合流し、また更に次の週の月曜日も、男四人がリビングで珈琲とお茶を飲む光景が広がっていた。

 クリスマスが数日後に迫った月曜日、萬狩は男だけの食卓で、とうとうその疑問を口にした。

「というか、なぜ俺の家に集まるんだ?」
「友人の家を訪れているだけですが、それが何か?」

 白衣姿の仲村渠が、当然の顔で不思議そうに尋ね返してきた。仲村渠老人と仲西青年は、勿論勤務時間中のはずで、――しかし萬狩は、彼らに常識を語るのは無駄骨だと悟って、早々に折れた。

 先週の話し合いで、何故か、クリスマス・イブに焼き芋パーティーを行う事が決定されていた。夜には予定が入っている者もいるが、早い時間であれば全員の都合がつきそうだという事で、またしても萬狩宅のカレンダーに予定が追加されたのだ。

 萬狩は目頭を揉みこみ、彼らの訪問については脇に置いて「クリスマスの件は承知したが」と、どうしても理解し難い点を訊いた。

「まず、クリスマス・イブに焼き芋ってなんだ。おかしくないか?」
「萬狩さん、夜は僕とケーキを食べましょうね!」