その翌日、萬狩は、雑草が早々に伸び始めた庭を一望し、久々に身体でも動かそうと考えて意気込んだ。

 朝一番、黒魔を走らせて街で必要なものを購入した後、広い庭の雑草刈りを始めた。最近は夕刻になると蚊も多いような気がするし、ここ三週間ですっかり、足腰が無駄に重くなったような気もしている。

 環境の違いのせいなのか、普段ならなんでも業者を雇って金で解決していた萬狩だったが、暇がそうさせているか、不思議と汗を流す事を苦に感じていなかった。

 何故だか、買い物をしている時からワクワクしている自分に気付いていた。新しい草刈り機が、ひどく役に立っている事も大きいのかもしれないと、萬狩はそう考え直した。

 実に予想外だったのだが、大変だったのは、刈った草を袋にまとめる作業だった。

 調子に乗って広い敷地内の雑草のほとんどに手を出したのはいいが、ふと我に返った時、辺りを見渡して、廃棄する草の量に萬狩は愕然とした。雨に降られでもしたら、更に虫の発生を促しかねない惨状だった。

 萬狩が草を袋に詰める様子を、シェリーは、リビングから出て少しの場所に寝そべった状態で眺めていた。彼女が眠る気配はない。

 老犬の食事と間食の時間はしっかり守っていたので、萬狩は、腕時計で何度も時刻を確認した。まだ三割の草も詰められていない状況だったが、あっという間に昼食の時間になってしまい、老犬に食事を与えるついでに煙草休憩も兼ねて、自分も軽く何か食べる事にして手を止めた。

 キッチンに立つのは億劫だったので、萬狩は、焼いた食パンにバターを塗って食べた。

 一度身体を休めてしまうと、すぐにでもシャワーを浴びたい気分にさせられたが、この家には彼一人しかいないのだ。誰かに任せられるはずもなく、萬狩は、重い腰を上げて作業を再開した。