煙草を咥えたまま、萬狩は顰め面で古賀に言い、親指で仲西青年を指した。すると、シェリーと並んでいた仲西が、古賀の視線を受け止めてすぐ偉そうに胸を張った。

「僕達はいわば、友達同士！　同じ窯の飯を食う仲ってやつですよ！」
「おい、妙な具合に言葉の使い方を間違えるんじゃない。それなりの仲にも礼儀が必要だという事を覚えておけ」

　ああ、そうじゃないのだ。すっかり脱線した。

　つまりだな、と萬狩は、脱線した話を戻すように、古賀へ言葉を続けた。

「お前も、いつでも遊びに来ればいい」

　あっさり認めて、萬狩は、独り言のように告げた。谷川だって、若い頃はよく俺のところに来ていた。ああ、谷川というのは大学時代の後輩で、これがまた変わった奴で……

　二人の青年は、萬狩から聞かされる友人の話に、時折相槌を打ちながら聞き入った。

　寒さが身に堪えた頃、萬狩達は、シェリーと共に部屋の中に戻った。ホット珈琲を飲み、しばらくテレビをつけてコメディ番組を観賞した。

　彼らの身体が温まった頃に、シェリーが大きな欠伸一つもらし、萬狩は、早めの帰りを青年組に言い渡した。冬の夜は、深く長いのだ。仲西も明日は仕事であるし、漫画が忙しくなっている古賀にも、あまり暇はないだろうと事情を察したうえでの判断だった。

　二人を見送った後、萬狩は、リビングのソファに戻ってテレビの続きを見た。ふと気付くと、シェリーは気に入っているストーブの前で熟睡していた。

　今日は見送りをしなかった。多分、すっかり疲れたのだろう。

　なんだか起こすのも悪い気がして、萬狩は、夜もまだ早いのだからと引き続きコメディ番組を視聴する事にした。

　しばらくテレビ画面を眺めていた萬狩は、そのうち軽い眠気を覚えて、少しだけ眠る事にして目を閉じた。