「まだ日中は二十度ぐらいだろう」
「沖縄の人にとっては、もう寒いぐらいのレベルなのですよ、萬狩さん。特に私は年寄りなので、寒さが堪えるのです」

 対する古賀は、日中は薄地のパーカー一枚でも平気そうだった。寒がる仲村渠と仲西を不思議そうに見て、「そういえば、沖縄の人って寒がりですよね」と言っていた。

「萬狩さん、焼き芋パーティーをしましょう! 寒いですッ、もう我慢なりません!」
「なんだ、そのおかしな理由は」

 十一月最後の月曜日、沖縄は晴れ間が広がっているというのに、日中の気温が二十度を超えなくなっていた。

 すっかりマフラーを常備するようになった仲西が、自分の仕事を終え、シェリーと共にストーブの前で丸くなっていたかと思うと、突然そう主張した。

 食卓で熱いお茶を楽しんでいた仲村渠が、常識人らしい反応で少し眉を寄せて、床に転がっている仲西青年へと目を向けた。今日は、古賀は来ていない。

 萬狩は、仲村渠が珍しくも仲西青年を嗜めるのか、と見守っていたのだが、その期待はすぐに打ち砕かれた。

「仲西君。黄金芋と紅芋、どっちの予定なの?」
「おい。そこじゃないだろう」
「いえ、大事なことです。私、焼き芋は黄色い派ですし、焚き火のお供として、ジャガバターも楽しむ派なのです」
「いいですね、ジャガイモ! 今週は雨も降らないし、日曜日にやっちゃいましょうよ」
「おい、ちょっと待――」
「早速、僕の方で古賀さんに声を掛けてみますね! 萬狩さんは、木炭の用意をお願いしますッ」

 萬狩の台詞を遮った事にも気付いていない仲西が、やけに凛々しい顔で、敬礼するように手を顔の横に構える。仲村渠が、思案するように顎を撫でた。