――翌日の日曜日、鍋パーティー当日。

 夜明け前に、仲西青年が遊び道具と少量の食材を持ってやって来て、萬狩は、もはや掛けるような言葉もなく、共に庭の雑草刈りを行った。

 朝のアニメ放送が終わらない時間帯に訪問した仲村渠は、手製の塩オニギリと茶葉と珈琲豆を持っており、それから遅れて古賀が、花火とカット野菜と鳥肉を持参して、若い恋人と共にやってきた。

「あの、本日はよろしくお願いします」

 恐縮しきった様子の、一見すると学生にも見える童顔の女性は、古賀の恋人ですと恥ずかしそうに挨拶したが、対面した萬狩が思わず「あ」と声を上げると、彼女も遅れて気付いたように「えッ」と目を見開いた。

「……ぶつかってしまった、おじさん?」
「……ぶつかってきた子か?」

 二人が茫然と見つめ合っていると、知らぬ古賀が「どこで知り合ったんですか?」と驚いたように言った。

 こんな偶然もあるものなのだなと、萬狩は、最近すっかり忘れていた横繋がりを感じさせられて頭を抱えた。少女にも見える古賀の彼女をチラリと見やると、どこか焦るように目で、何事かを訴えていて、「おや?」と思った。

 あの時の事は、詳細を語らないで下さい。

 頼りない彼女の丸い目が、そう語っているような気がした。

 萬狩はそこで唐突に、既に彼女が、古賀の秘密を知っている可能性があるのではないかと思い至った。あの時彼女が大事そうに腕の中に抱えていた書籍は、もしかしたら、彼がもう一つのペンネームで描いているという、例の作品なのではないだろうか。

 そんな都合の良い話があるとは限らないが、ここに移住してから、そんな偶然が続いているのだ。あっても不思議じゃないと、萬狩は、早々に深く考えるのをやめた。