『あ、お土産は饅頭系を希望していますッ。仲村渠(なかんだかり)さんはケーキ系がいいって言ってますけど、古賀さんとの意見と足して、二で割って、饅頭系で落ち着きました!』

 おい、落ち着いたってなんだ。

 受話器から漏れる仲西の声を聞いて、隣にいた谷川が、口を押さえながら腹を抱えていた。萬狩は、こちらに背を向けた親友が、肩を震わせながら笑いを堪える様を睨みつけた。

 くそッ、あとで覚えていろよ。

 萬狩は、向かい側で目を見張る息子の視線を、苦々しく受けとめた。なんてタイミングなんだと、天を仰ぎたくなる衝動に駆られる。

「急ぎじゃなければ、後でいいか。今、友人と息子と一緒にいるんだが――」
『難しい話をされる息子さん? 僕もお話したいです!』
「お前は遠慮を知らんのか」
『どんなアニメが好きなんですか?』
「お前、俺の話を聞いていないだろう? そもそも、俺に質問しても意味がないと気付け」

 すると、傍観していた翔也が苦笑し、腰を上げて「いいですよ、父さん。僕が替わりますよ」と言った。萬狩は数秒迷ったものの、仲西青年の相手に疲れ切っていたので、渋々携帯電話を差し出した。

 翔也は、僅かに意外そうな表情を浮かべたものの、すぐに取り繕うように微笑んで、萬狩から携帯電話を受け取った。

 しばらく萬狩は、翔也と仲西のやりとりを不安な気持ちで見守っていた。電話を代わって早々、翔也は「父がお世話になっています」「次男の翔也と言います」と始まった。

 次第に翔也は「え、アニメですか」「お菓子は、あまり食べないですね」「さぁ、タームパイは食べた事がないですけれど……」と、萬狩が気になる単語を出し始めた。