「別に、お前らが漫画を読んでいようが、気にする程度じゃない。いや、そうじゃなくてだな。あいつは『少し恥ずかしいような漫画』と言っていたんだが」
「そうですねぇ、多分、そうかもしれません」
翔也は少し考え、それを認めるように肯いた。
「主に女性に人気なんですよ。最近の母さんのマイブームでもあります」
「は、マイブーム……?」
「つまり『めちゃくちゃハマってる』ってやつですよ、父さん。通販だと時間がかかるし、自分で買いに行くのは恥ずかしいのか、母さんはいつも僕に頼むんですよね」
すごくキレイなタッチの絵なんですよ、と翔也は思い出しながら言葉を続けた。
「全体的にキラキラしている感じで、表紙がすぐ目にとまるんです。僕は同性間の恋愛なんかはよく理解出来ないんですが、母さんから言わせれば、だからこその純愛、だとか……?」
萬狩は、思わず自分の耳を叩いていた。隣で谷川が「大丈夫、僕も聞こえていたから」と、動揺して目を泳がせながら、萬狩の背を押して「君が訊いて」と言う。
実に嫌な役目だと思いながら、萬狩は息子に尋ねた。
「『同性』ってなんだ、俺の聞き間違いか?」
「だから、そういう愛の形もあるというやつなんですよ、父さん。全部じゃありませんが、大抵そんな内容を扱っているレーベルなんです」
「『れーべる』?」
萬狩が口の中で反芻すると、谷川が腑に落ちたように「なるほど、そういう事か」と呟いた。萬狩が疑問の目を向ければ、多分言ってもわからないだろうからと言わんばかりの、生温かい目で左右に首を振る仕草をされた。
萬狩は、古賀にペンネームを教えてもらっていたものの、実際にネットでの検索もかけていなければ、書店にも寄っていなかった。シェリーの件で、そんな余裕はなかったからだ。
「そうですねぇ、多分、そうかもしれません」
翔也は少し考え、それを認めるように肯いた。
「主に女性に人気なんですよ。最近の母さんのマイブームでもあります」
「は、マイブーム……?」
「つまり『めちゃくちゃハマってる』ってやつですよ、父さん。通販だと時間がかかるし、自分で買いに行くのは恥ずかしいのか、母さんはいつも僕に頼むんですよね」
すごくキレイなタッチの絵なんですよ、と翔也は思い出しながら言葉を続けた。
「全体的にキラキラしている感じで、表紙がすぐ目にとまるんです。僕は同性間の恋愛なんかはよく理解出来ないんですが、母さんから言わせれば、だからこその純愛、だとか……?」
萬狩は、思わず自分の耳を叩いていた。隣で谷川が「大丈夫、僕も聞こえていたから」と、動揺して目を泳がせながら、萬狩の背を押して「君が訊いて」と言う。
実に嫌な役目だと思いながら、萬狩は息子に尋ねた。
「『同性』ってなんだ、俺の聞き間違いか?」
「だから、そういう愛の形もあるというやつなんですよ、父さん。全部じゃありませんが、大抵そんな内容を扱っているレーベルなんです」
「『れーべる』?」
萬狩が口の中で反芻すると、谷川が腑に落ちたように「なるほど、そういう事か」と呟いた。萬狩が疑問の目を向ければ、多分言ってもわからないだろうからと言わんばかりの、生温かい目で左右に首を振る仕草をされた。
萬狩は、古賀にペンネームを教えてもらっていたものの、実際にネットでの検索もかけていなければ、書店にも寄っていなかった。シェリーの件で、そんな余裕はなかったからだ。