バーベキューの一件以来、仲村渠と仲西は、時間を合わせたかのように、きっかり午前十時にやって来るようになった。仲西の方は相変わらず、木曜日も萬狩宅通いを続けている。

 時折、漫画のネタ作りに協力して欲しいと頼まれ、仲西の来る時間に会わせて、古賀も顔を出すようになっていた。どうやら、次の作品にはピアノが出るらしい。

 実際にグランドピアノを目にした古賀は、「すごい」と目を見張り、それのスケッチを行ってもいた。いずれ犬も出したいのだと、彼は明るく語る。

 古賀は、引き続きピアノ教室に通っているらしい。彼の借りている部屋は中部地区にあるようで、こちらの地区は北部寄りのため通うまでの道のりは長いのだが、車に乗り慣れているから問題はない、と本人は言う。

 萬狩宅が静かで広々としている事を、古賀は「ネタを考えるのに適している」と言って羨ましがった。何より、ペットと暮らせないマンションに住んでいる彼は、シェリーとの触れあいも気に入っているようだった。

 萬狩とシェリーは、変わらぬ生活を送っていた。

 最近になって、日中の最高気温は三十度に届かない程度に落ち着いてきていた。夜になると、冷房の稼働時間を短時間に設定しなければ、朝方に肌寒い思いをしてしまうほどだ。

 日常は落ち着いていたが、萬狩は、最近気になる事があった。シェリーは夜中にトイレに起き事があるのだが、その回数が、以前に比べて増えているような気がした。トイレシートを見る限り、含まれている尿の量が多くなったという感じはなく、便の色や形に変化もないのも不思議だ。