「あの小さい三連の星? あの、ぼくは、ネックレスというよりは、何か――」
「で、一番輝いているあの星が仲西座ですよ! 萬狩さんもちゃんと聞いてくれてますか? あれは仲西座なんで、萬狩さんは別の星を選んでくださいね」
「仲西さん、多分あれ、人工衛星ですけど、いいんですか?」
仲西がはしゃぐように宙に伸ばした腕を振り、古賀が短くて太い腕を横に振った。萬狩は堪え切れず、「おい。お前らは漫才でもしているのか?」と口を挟んでいた。
互いに星空に顔を向けたまま、目的も理由もないやりとりは続いた。
「お前、少しは彼の話を聞いてやれ。途中、何度も遮っているからな」
「聞いてますよ。ネックレス座に感動して、仲西座を把握したって話でしょう?」
「仲西君、君って本当に単細胞だよねぇ」
その時、シェリーが「ふわん」と鳴いたので、仲村渠が「ほら、彼女も同意していますよ」と萬狩の腹をまたぐように腕を伸ばし、老犬の背中に軽く触れた。古賀が、「何度聞いても珍しい鳴き声ですよね……」と感心したように呟いた。
しばらく、仲村渠と古賀のやりとりが続いた。
仲村渠老人は、古賀が漫画家であるとは知らなかったらしい。物珍しそうに「そうなの」「同人?」「ふうん、いろいろと大変なのねぇ」と相槌を打った。古賀はついでに悩みも打ち明けつつ、今度ぼくの絵を見てみて下さい、とまたしても例の如く、この世の終わりのように声を沈ませた。
「そういえば、俺は君のペンネームを知らないんだが」
萬狩は、思い出して尋ねた。
古賀は遅れてその事実に気付いたのか、慌てて起き上がりポケットを探り始めたが、途端に「ぼく、今日は完全オフの日でした……」と泣きそうな顔で萬狩達を見た。
どうやら、名刺を渡そうとしてくれたらしい。営業マンみたいだな、と萬狩は思った。
「で、一番輝いているあの星が仲西座ですよ! 萬狩さんもちゃんと聞いてくれてますか? あれは仲西座なんで、萬狩さんは別の星を選んでくださいね」
「仲西さん、多分あれ、人工衛星ですけど、いいんですか?」
仲西がはしゃぐように宙に伸ばした腕を振り、古賀が短くて太い腕を横に振った。萬狩は堪え切れず、「おい。お前らは漫才でもしているのか?」と口を挟んでいた。
互いに星空に顔を向けたまま、目的も理由もないやりとりは続いた。
「お前、少しは彼の話を聞いてやれ。途中、何度も遮っているからな」
「聞いてますよ。ネックレス座に感動して、仲西座を把握したって話でしょう?」
「仲西君、君って本当に単細胞だよねぇ」
その時、シェリーが「ふわん」と鳴いたので、仲村渠が「ほら、彼女も同意していますよ」と萬狩の腹をまたぐように腕を伸ばし、老犬の背中に軽く触れた。古賀が、「何度聞いても珍しい鳴き声ですよね……」と感心したように呟いた。
しばらく、仲村渠と古賀のやりとりが続いた。
仲村渠老人は、古賀が漫画家であるとは知らなかったらしい。物珍しそうに「そうなの」「同人?」「ふうん、いろいろと大変なのねぇ」と相槌を打った。古賀はついでに悩みも打ち明けつつ、今度ぼくの絵を見てみて下さい、とまたしても例の如く、この世の終わりのように声を沈ませた。
「そういえば、俺は君のペンネームを知らないんだが」
萬狩は、思い出して尋ねた。
古賀は遅れてその事実に気付いたのか、慌てて起き上がりポケットを探り始めたが、途端に「ぼく、今日は完全オフの日でした……」と泣きそうな顔で萬狩達を見た。
どうやら、名刺を渡そうとしてくれたらしい。営業マンみたいだな、と萬狩は思った。