そういうものか、と萬狩は口の中で呟いた。
星は、星でしかありえないし、それ以上でもそれ以下でもありはしない。
けれど、萬狩は同時に、仲西が思うところも少しだけ共感出来るような気がした。シェリーと一緒に見た、一人と一匹の静かな星空のように、今、こうして目の前に広がる宇宙もまた、横になって眺めていると、本当に落ちていきそうにも思えるほどに広大に思える。
古賀は、呆けたように口を開いたまま夜空に見入っていた。仲村渠が、「ガジャンが入りますよ」と優しく忠告する声に、萬狩と古賀が揃って「ん?」と尋ね返す。
「すまない。――ガ、なんだって?」
「おっと、失礼しました。蚊や蛾が入りますよ。あれらは、それはそれは不味いのですよ。食べると舌が痺れます」
「食べた事があるのか」
「誤って三回ほど」
結構な頻度で食べているな。
萬狩の視線にそれを感じ取ったのか、仲村渠老人は「ふっふっふ」と笑って誤魔化した。すかさず仲西が挙手し「僕も食べた事があります!」と自信たっぷりに主張した。
「ブランコから飛び降りて、顔面強打する直前に、空中で蛾を見事この口でキャッチしました!」
「それは特殊な方法ですねぇ。何度聞いてもバ――笑えます」
仲村渠は、口に手をやってそう言った。萬狩も古賀も、彼に同意してしまった。
視界の端に映る、わずかな家の明かりが気にならないほど、空は星の輝きで満ちていた。一度だけ流れ星が夜空を跨いで、仲西と古賀が興奮の声を上げた。それがなんだか可笑しくて、萬狩は声を抑えて笑った。
「古賀さん、あれがオリオン座ですよ。で、あの下にある星を、僕はネックレス座と呼んでいます」
星は、星でしかありえないし、それ以上でもそれ以下でもありはしない。
けれど、萬狩は同時に、仲西が思うところも少しだけ共感出来るような気がした。シェリーと一緒に見た、一人と一匹の静かな星空のように、今、こうして目の前に広がる宇宙もまた、横になって眺めていると、本当に落ちていきそうにも思えるほどに広大に思える。
古賀は、呆けたように口を開いたまま夜空に見入っていた。仲村渠が、「ガジャンが入りますよ」と優しく忠告する声に、萬狩と古賀が揃って「ん?」と尋ね返す。
「すまない。――ガ、なんだって?」
「おっと、失礼しました。蚊や蛾が入りますよ。あれらは、それはそれは不味いのですよ。食べると舌が痺れます」
「食べた事があるのか」
「誤って三回ほど」
結構な頻度で食べているな。
萬狩の視線にそれを感じ取ったのか、仲村渠老人は「ふっふっふ」と笑って誤魔化した。すかさず仲西が挙手し「僕も食べた事があります!」と自信たっぷりに主張した。
「ブランコから飛び降りて、顔面強打する直前に、空中で蛾を見事この口でキャッチしました!」
「それは特殊な方法ですねぇ。何度聞いてもバ――笑えます」
仲村渠は、口に手をやってそう言った。萬狩も古賀も、彼に同意してしまった。
視界の端に映る、わずかな家の明かりが気にならないほど、空は星の輝きで満ちていた。一度だけ流れ星が夜空を跨いで、仲西と古賀が興奮の声を上げた。それがなんだか可笑しくて、萬狩は声を抑えて笑った。
「古賀さん、あれがオリオン座ですよ。で、あの下にある星を、僕はネックレス座と呼んでいます」