庭先で四人輪になって広がり、ビーチバレー用の軽いボールを使用して回していった。器用ではない萬狩と古賀がボールを妙な方向に飛ばすと、仲西が俊敏な動きで必ずそれを拾い上げた。その時ばかりは、彼の表情も凛々しく見える。
シェリーは、飛び跳ねるボールが楽しいのか、萬狩の周囲をぐるぐると回っていた。老いた犬なので、ボールを追いかける脚力はなかったが、時折、仲村渠老人と仲西青年が気を利かせてボールをやれば、鼻先で器用に打ち返したりした。
「シェリーちゃん、ボール遊びがすごく得意なんですよ」
「ほぉ、それは知らなかったな」
「以前、芸を仕込もうとされていた事がありましたなぁ」
仲村渠が言っているのは、恐らく前の飼い主『サチエ』の事だろう。
お嬢様育ちの老婆が、愛犬に芸を仕込む様子は想像に疑問が尽きないが、萬狩は、事情を知らないであろう古賀の存在に遠慮して、口にはしなかった。
ボール遊びは夕刻まで続き、萬狩は最後、とうとう体力負けして「降参だ」と弱音を吐いた。仲村渠老人の余裕しゃくしゃくの笑顔が癪に障ったが、その時には、もうそれを言い返す力も残されていなかった。
萬狩は三人と一匹をその場に残すと、休憩をするため、テラス席に腰かけて呼吸を整え、それから煙草に火をつけた。
古賀は重々しく身体を動かせながらも、楽しそうにボール遊びに付き合っていた。仲西は汗で髪まで濡れてしまっているが、仲村渠老人だけが、涼しい表情でボールを軽々と打ち返し続けている。
「……あの人は怪物か」
一瞬、そんなバカな事が口をついて出て、萬狩は、そんな自分に驚いて口をつぐんだ。庭先に広がったバーベキュー道具へと無理やり意識を向け、「これを片付けるんだよなぁ」とぼやいた。
※※※
陽が暮れた頃に水の入ったバケツが用意され、花火が始まった。
シェリーは、飛び跳ねるボールが楽しいのか、萬狩の周囲をぐるぐると回っていた。老いた犬なので、ボールを追いかける脚力はなかったが、時折、仲村渠老人と仲西青年が気を利かせてボールをやれば、鼻先で器用に打ち返したりした。
「シェリーちゃん、ボール遊びがすごく得意なんですよ」
「ほぉ、それは知らなかったな」
「以前、芸を仕込もうとされていた事がありましたなぁ」
仲村渠が言っているのは、恐らく前の飼い主『サチエ』の事だろう。
お嬢様育ちの老婆が、愛犬に芸を仕込む様子は想像に疑問が尽きないが、萬狩は、事情を知らないであろう古賀の存在に遠慮して、口にはしなかった。
ボール遊びは夕刻まで続き、萬狩は最後、とうとう体力負けして「降参だ」と弱音を吐いた。仲村渠老人の余裕しゃくしゃくの笑顔が癪に障ったが、その時には、もうそれを言い返す力も残されていなかった。
萬狩は三人と一匹をその場に残すと、休憩をするため、テラス席に腰かけて呼吸を整え、それから煙草に火をつけた。
古賀は重々しく身体を動かせながらも、楽しそうにボール遊びに付き合っていた。仲西は汗で髪まで濡れてしまっているが、仲村渠老人だけが、涼しい表情でボールを軽々と打ち返し続けている。
「……あの人は怪物か」
一瞬、そんなバカな事が口をついて出て、萬狩は、そんな自分に驚いて口をつぐんだ。庭先に広がったバーベキュー道具へと無理やり意識を向け、「これを片付けるんだよなぁ」とぼやいた。
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陽が暮れた頃に水の入ったバケツが用意され、花火が始まった。