先程、午前十時頃にやってきた仲村渠老人は、アロハシャツに麦わら帽子をかぶり、ラップで巻かれたオニギリの入ったバスケットを持っていた。彼がビニールシートを敷くと、仲西がそこに菓子の詰まった袋を置いて、二人で慣れたように焼き台に木炭をセットし始め、早々に今の状態が完成したのだ。

 現在、仲西青年がウチワを片手に、木炭が十分に燃えるよう風を送っているところだった。物珍しいのか、懐かしいのか、そこには尻尾を振って覗きこむ老犬の姿もある。

 仲村渠老人は、缶ビールを片手にテラステーブルで飲み、仲西青年の様子を見守っていた。萬狩は遠慮せず煙草を吸っているのだが、どうやら現役の高齢獣医は、煙草の煙は気にならないようだった。

 萬狩は「まぁ、そんな事はいいんだ」と、己に言い聞かせるように呟いた。堪え切れず、これだけは訊いておこうと思い、つい口に出しをしてしまう。

「ビールの出番が早くないか」
「ノンアルコールですよ」

 萬狩が指摘すれば、仲村渠老人がとぼけた顔で即答した。

 妻が迎えてくれるのであれば島酒を持ってきたのですがねぇ、叱られてしまったので自分の車で来ました、と、仲村渠は残念そうに缶ビールを口につける。

 テラステーブルのすぐ後ろの窓は、出入り目的のため解放されていた。そこからは、冷房が稼働した室内の涼しい空気が流れてくる。

 電機代や冷気が勿体ないとは考えていないが、萬狩としては、そこにこんもりと盛られ置かれた物が問題だった。

 花火、天体望遠鏡、天体観測用の薄本、トランプと人生ゲームセット、将棋と麻雀セット、バトミントンの道具、サッカーボールとビーチボール、ゲーム機……等といった、無視するには大きすぎる道具が山になっているのが、非常に気になっている。