「……おい、ちょっと待て。どうやってバイクに詰め込んだ?」
「足元に乗っけました!」

 こういう時に会社の車を借りられればいいんですけどねぇ、と仲西は朗らかに笑った。それは職権乱用であるし、お前はまだその立場にはいないだろうから絶対に無理だ、と萬狩は苛立ち紛れに忠告してやった。

 仲西青年の騒ぎの一件で、シェリーは既に起き出していて、ベッドの足元で萬狩を待っていた。萬狩がベッドから降りる間に、仲西青年が慣れたようにカーテンと窓を開けた。

「シェリーちゃんの事は僕がやっておきますので、萬狩さんは、先に洗面所の用事を済ませて来て下さいね」

 お前は俺の息子か何かなのか?

 萬狩は頭が痛くなったが、しっかり風呂まで入ることにして部屋を後にした。

          ※※※

 太陽はすっかり頭上近くまで昇っていたが、まだ正午には早い時刻。

 小さな花壇が一つあるだけの広い庭に、バーベキューのセットが並んだ光景を、朝一番から動かされていた萬狩は、ようやく腰を落ち着けて、煙草を吹かしながら眺めた。

 九月とはいえ、沖縄は相変わらず夏日が続いている。萬狩の自宅は山の上にあるので、吹き抜ける風は海風と混ざって幾分か涼しくも感じられるが、既にシャツの内側には汗が張り付いている状態だった。

 閑散としていたはずの庭には、現在、食べ物を焼く台と、箱に入った木炭一式。肉が保管されているクーラーボックスと、仲村渠が持ってきた飲料水専用のクーラーボックス。

 それから、いつ誰が持ってきたのか、折り畳み式のテーブルの上には紙皿などの必要品が並べられ、先程キッチンで仲西青年が切った野菜も置かれていた。