それから二人は、萬狩が口を挟む隙もないほど、勝手に語り合い始めた。

 バーベキューといえば、やはりビールは必須でしょう。いや、塩オニギリこそ必須なので、明日作りましょうよ。念の為ビニールシートも用意しましょうか。天体望遠鏡なんてどうですかね。いやいや、ここは星が良く見えるから必要ないんじゃないの、クッションは必要かもしれないね……

 おい、お前ら。俺の家で一体何をおっぱじめる気だ?

 仲西青年と仲村渠老人の会話は次々に進み、しまいには麻雀やオセロ、人生ゲームなどの単語も出始めた。

 萬狩の知識や常識が正しいとすれば、大人同士のバーベキューに、大勢の子供が遊ぶような遊戯道具はいらないはずだ。そもそも、どのタイミングでトランプやキャッチボールをする気でいるんだ!

 話題に上がっていたオニギリに関しては、仲村渠が「妻がやってくれるそうなので、心配に及びませんよ」と携帯電話を片手にそう言った。悶々と考えていた萬狩は、「ぐぅ、もう勝手にしてくれ……」と諦めて答え、日が暮れる前に二人を見送った。

       ※※※

 仲西青年と仲村渠老人を見送ったその日、萬狩は、明日のバーベキューの事を考えて早めにベッドに入った。

 長時間の運転や買い物は、思いの他身体に堪えたらしい。特に後半、自宅内で飛び交っていた仲西と仲村渠のやりとりで、残っていた精神力の大半を持っていかれたような気がする。

 ベッドに入り目を閉じると、しばらくもしないうちに深い眠りへと落ちた。普段よりは活発的に外に出て行動していた事で、身体はほどよく疲労しており、久しぶりに気持ちのいい眠りだった。
 
 萬狩は夢の中で、懐かしいような、気になるような過去のワンシーンを見たような気がした。