集中力が切れたのだろうと察し、萬狩は立ち上がって、自身の書斎室へと足を向けた。シェリーがのそりと起き上がり、どこか軽い足取りで彼の後を追う。

 翌日の日曜日にはバーベキューが開催される事あり、今日は土曜日であるが、木曜日に引き続き仲西青年がやってくる予定があった。仲村渠獣医も午後から休診との事で、助手をパシりに、自前のバーベキュー台を持ってくるらしい。

 萬狩の本日の予定は、その到着を待って彼らにシェリーを預けた後、会社へ郵便物を送るついでに中部まで車で下り、紹介された安売りのホームセンターで、紙皿などを購入する係りを任命されていた。

 購入リストは、これから仲村渠と仲西が持ってくる予定だ。仲西青年の「おやつも必要ですよね!」という、木曜日の去り際の言葉が気になっているものの、まぁ腐るものでもないからいいか、と萬狩は若干許容もしている。

「なんだか忙しいなぁ。おちおち休めやしないぜ」

 萬狩は吐息交じりに愚痴り、書斎机に腰を降ろしてパソコンを立ち上げた。しかし、彼の眉間の皺は随分と浅くもあった。

 彼の足元に優雅に腰を落ち着けた老犬のシェリーが、笑うように「ふわわ」と優しげに鳴いた。

        ※※※

 買い出しについて、萬狩が予定していた中城村(なかぐすくそん)あたりではなく、那覇まで車を走らせたのは、何となくだった。

 萬狩は車を走らせながら、ふと那覇市に郵便局本店があったなと考え、見て回るついでに、買い物も済ませようと思い至ったのだ。

 高速を使えば一時間足らずで辿りつける、観光でも有名な那覇の中心街は、建物と車でごった返していた。

 萬狩は、壺川駅近くにある郵便局本店で郵送手続きを済ませた後、国際通り近くのコインパーキングに車を停めて、買い出しついでに国際通りと周辺を少し散策する事にした。