仲西は、今は知恵熱のため体調が悪いのは本当の事なので、今日は折角来てくれたのにお茶も菓子も出せないで申し訳ない、という事を言った。改めて遊びに来て下さい、と疲労感漂う笑顔で続ける。

 いや、遊びに来る予定は特にないし、今回も遊びに来たわけではないという萬狩の台詞を聞き流した仲西青年は、久しぶりの再会を喜んでシェリーを「可愛いかわいい」と撫で回した。

「古賀君と、パフェの梯子をしたのもまずかったかなと思っているんですよ」

 唐突に、例の漫画家である小男の名前が出て、萬狩は耳を疑った。

「ちょっと待て。お前ら、いつの間にそんな仲になった?」
「え? 番号交換して、萬狩さんの事を愚痴りつつ食べ歩きしたんです」
「濡れたままか?」
「さすがに服は着替えましたよ。僕のシャツを着た古賀君、すごく面白かったです。袖口もしっかり伸びちゃって、律儀に新しいシャツまで買ってきてくれたんですよ」

 萬狩は「ふうん」と答えながら、二人の組み合わせを想像した。仲西に振り回される小さくて丸い古賀が、なんだか容易に想像出来た。

「そういえば、あいつは何か相談事をしていなかったか」
「確か、彼女さんの事ですよね? すごい漫画家さんらしくて、『とにかく当たって砕けてみれば?』って感じで上手くアドバイスしておきました。ちなみに、マンゴーパフェが最高でした!」
「それはアドバイスになるのか? というより、お前はちっとも悩みの根源を理解していないどころか、覚えてすらいないだろう、食うのに夢中で」
「それと、バーベキューにも誘っておきましたよ」

 相変わらず、仲西青年の話はよく飛ぶ。

 今度は、萬狩が沈黙する番だった。人との距離感を間違えているのは、もしかしたら俺の方なのかと、彼は額を押さえた。