そう言えば沖縄は、海底にあるサンゴや砂地まで見える美しい海だったなと、萬狩は遅れて気付かされた。見降ろす先の海底を、名前も知らない小さな魚と、人に害はないであろう小振りの鮫が、ゆっくりと泳ぐ風景を目に止める。
ああ、きれいだなと思った。こんなに透き通った海が、外から見たら濃くはっきりとした青にしか見えないなんて、不思議でしかない。
まるで落ちていくような怖さも覚えるほど、沖縄の海の透度の高さには、驚かされるばかりだ。
海の底に落ちそうだという恐怖に似た感覚は、ただの錯覚に過ぎない。
きっと、久しぶりに海に入ったせいだろう。そう萬狩は考えた。人の体は、海の中では浮くものだ。落ちるなんてありはしないし、あの時の長男のように、それを恐れるほど萬狩は物を知らない歳でもない。
どうか水面へ浮いているものの、乱れた呼吸を繰り返し、疲労で震える萬狩の腕に抱えられていた少年が、「おじちゃん」と遠慮がちに心配した声を掛けた。けれど、その呼び声も耳に入らないほど、萬狩は憔悴しきっていた。
ああ、大きな鮫がいなくて良かったな。
もしそうだったら、あっという間に食われちまっていただろう。
少年がもう一度「おじちゃん」と泣きそうな声を上げるのを聞いて、萬狩は、ようやく自分が、予定以上に身体を休めている事に気付いた。
萬狩は子供にどうにか笑い掛けて、「さ、行くぞ」と再び泳ぎ始めた。しかし、ここ数日は食が細かった事が影響しているのか、手足にうまく力が入ってくれないでいた。
ずっと波に揺られているせいか、夏バテによる強い吐き気も戻り始めていた。身体はこんなにも冷たい水の中にあるというのに、なんだか無性に喉も乾いて、ひどく暑い。
ああ、きれいだなと思った。こんなに透き通った海が、外から見たら濃くはっきりとした青にしか見えないなんて、不思議でしかない。
まるで落ちていくような怖さも覚えるほど、沖縄の海の透度の高さには、驚かされるばかりだ。
海の底に落ちそうだという恐怖に似た感覚は、ただの錯覚に過ぎない。
きっと、久しぶりに海に入ったせいだろう。そう萬狩は考えた。人の体は、海の中では浮くものだ。落ちるなんてありはしないし、あの時の長男のように、それを恐れるほど萬狩は物を知らない歳でもない。
どうか水面へ浮いているものの、乱れた呼吸を繰り返し、疲労で震える萬狩の腕に抱えられていた少年が、「おじちゃん」と遠慮がちに心配した声を掛けた。けれど、その呼び声も耳に入らないほど、萬狩は憔悴しきっていた。
ああ、大きな鮫がいなくて良かったな。
もしそうだったら、あっという間に食われちまっていただろう。
少年がもう一度「おじちゃん」と泣きそうな声を上げるのを聞いて、萬狩は、ようやく自分が、予定以上に身体を休めている事に気付いた。
萬狩は子供にどうにか笑い掛けて、「さ、行くぞ」と再び泳ぎ始めた。しかし、ここ数日は食が細かった事が影響しているのか、手足にうまく力が入ってくれないでいた。
ずっと波に揺られているせいか、夏バテによる強い吐き気も戻り始めていた。身体はこんなにも冷たい水の中にあるというのに、なんだか無性に喉も乾いて、ひどく暑い。