「ちょ、本当、あの、待って下さいッ、『思う』って……落ち着きましょうよ、そうと決まった訳じゃないですし、ぼ、ぼくは、速くは走れないんです!」
「馬鹿か! そうと決まった訳じゃないから、急いで確認するんだよ!」
何を考えているんだお前は、と萬狩は若輩者を叱責した。子供の身に起こる危険性について、萬狩は、息子達を通して学んでいた。ニュースで幼子の事故を見聞きするたび、予備の知識や危機感を改めて頭に入れ、彼は、そうやって自然と父親らしくなっていったのだ。
世代の違いだろう。すぐにピンと来なかったらしい古賀だったが、防波堤で騒いでいた少年達が、萬狩達に気付いた途端、今にも泣きそうな顔で助けを求める声を聞いて、ようやく察したように蒼白した。
幼い少年達はパニック状態で、自分達のもとに掛けてくる萬狩達に向かって泣きながら、「友達が誤って落ちた」「釣り竿を引っ張られた」「あいつ泳げないんだ」「流されたらどうしよう」「全然上がってこない」「死んでしまうのか」と、混乱したように一気に喚き立てた。
萬狩は、久しぶりの激しい運動が身体に堪えたが、歯を食いしばって防波堤の先を目指して走った。どうにか後方を離れずついてくる古賀に、「おいッ」と質問を投げる。
「お前、泳げるか!?」
「へ!? むッ、むむむむ無理です泳げません! ぼ、ぼくはカナヅチなんですッ!」
「ちッ、だと思ったぜ」
予想はしていたが、全く泳げない素人が海に飛び込んでも意味がない。萬狩は走りながら、腕時計を取り外しに掛かった。
シェリーをどこかに置いたらしい仲西が、まるでスポーツ選手のような見事な駆け足で、萬狩達の後を追い始めた。
萬狩が少年達のすぐ近くまで迫った時、仲西は防波堤の入口に足を踏み入れていて、その時になってようやく、萬狩は仲西青年の声が耳に入った。
「馬鹿か! そうと決まった訳じゃないから、急いで確認するんだよ!」
何を考えているんだお前は、と萬狩は若輩者を叱責した。子供の身に起こる危険性について、萬狩は、息子達を通して学んでいた。ニュースで幼子の事故を見聞きするたび、予備の知識や危機感を改めて頭に入れ、彼は、そうやって自然と父親らしくなっていったのだ。
世代の違いだろう。すぐにピンと来なかったらしい古賀だったが、防波堤で騒いでいた少年達が、萬狩達に気付いた途端、今にも泣きそうな顔で助けを求める声を聞いて、ようやく察したように蒼白した。
幼い少年達はパニック状態で、自分達のもとに掛けてくる萬狩達に向かって泣きながら、「友達が誤って落ちた」「釣り竿を引っ張られた」「あいつ泳げないんだ」「流されたらどうしよう」「全然上がってこない」「死んでしまうのか」と、混乱したように一気に喚き立てた。
萬狩は、久しぶりの激しい運動が身体に堪えたが、歯を食いしばって防波堤の先を目指して走った。どうにか後方を離れずついてくる古賀に、「おいッ」と質問を投げる。
「お前、泳げるか!?」
「へ!? むッ、むむむむ無理です泳げません! ぼ、ぼくはカナヅチなんですッ!」
「ちッ、だと思ったぜ」
予想はしていたが、全く泳げない素人が海に飛び込んでも意味がない。萬狩は走りながら、腕時計を取り外しに掛かった。
シェリーをどこかに置いたらしい仲西が、まるでスポーツ選手のような見事な駆け足で、萬狩達の後を追い始めた。
萬狩が少年達のすぐ近くまで迫った時、仲西は防波堤の入口に足を踏み入れていて、その時になってようやく、萬狩は仲西青年の声が耳に入った。