最近、仲西青年が、こちらに対して更に礼儀をなくしていっていると感じるのは、気のせいなのだろうか。父親に似ていると言われた件についても、萬狩には不思議でならない。

 あいつ、実際のところは友達なんていないんじゃなかろうか、とも不安になる。もしくは、時期的に余程暇をしているのか、どちらかだろう。

 いつの間にか古賀は話し終えていて、落ち着きなく海の方を見ていた。

 萬狩は、ふと、こんな時に仲西がいれば楽だっただろうな、と考えてしまった。古賀と彼は同世代であるのだし、きっと、話し上手な仲西なら、萬狩よりも良い話し相手になれただろう。

「悩みは個人のものだから、俺は、俺が感じた事しか言えないが」

 しばらく考えて、萬狩は、古賀に視線も向けずそう告げた。

「打ち明ける秘密としては、多分、自分が思っているよりも小さい事だってある。話してみれば案外、これまで感じていたほど大きな問題じゃなかったと、そう思うかもしれない」

 よく分からないが、恐らくはそういうものなのだろう。

 萬狩は、古賀の視線が遠慮がちに、自分の横顔に注がれているのを感じながら、そう独り言のように話した。

「俺は、誰かに相談されるような柄じゃないんだ。それぐらいしか思いつかないし、言ってやれない」

 思い返せば、息子達からそういった相談を聞かされた事もなかった。そういった内容について頼りにされない性格である事は、萬狩自身がよく知っている。だから今回、理髪店で古賀に懇願された時も、強い困惑を覚えたのだ。

 言い終えた後で、萬狩は、自分の言い方がきつくなかったか気になって古賀の様子を盗み見た。

 すると、古賀は特に困った様子もなく空を見上げ、何かを考えている風だった。悩みについて思うところでもあったのか、やはり解決しなかったかと諦めているのか、今日の晩御飯について考えているようでもあるし、どこか掴めない表情だった。