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 あれから三年の月日が流れ、私は大学生になった。

 【もうすぐ着くから待ってて!】

 届いたメッセージを見ながら、待ち合わせをしていた駅前で前髪を触っていた。


 「あかりー!ごめん、遅くなった!」

 向こうから走ってくる女の子は、大学の友達。

 「大丈夫だよ。私が早く着きすぎただけから」


 私にとってあの場所は、顔を上げなければ見えないものもあると教えてくれた、もうひとつの居場所。だからあの日から前を向いて歩こうと決めた。こんな自分も嫌いじゃない。
 

 休日の昼間、私たちは人通りの多い商店街を歩いていた。
 
 「灯のペンダント可愛いね、どこの?」

 隣を歩く彼女が、胸元で光る紅色の宝石に気づいてくれた。
 それが嬉しくて、つい笑みが零れてしまう。

 「これはね、初恋の人からもらったプレゼントだよ」

 よく見えるようにペンダントを持ち上げた。その輝きは今も失われていない。

 「えー!灯にそんな相手がいるなんて聞いてないよ!ねぇ今度紹介してよ」

 「機会があればねー」

 時が経った今でも、あの世界で過ごした日々を忘れたことは一度もない。
 そこでの出来事を話しても、きっと誰にも信じてもらえないだろうから口にしたことはないけれど。

 「そういえば、先輩から聞いた話なんだけどね」

 「なになに?」

 こうやって誰かに何気なく話せる日が来たら、その時は笑ってくれてもいいから、私の声に耳を傾けてほしい。
 ひとつの思い出話になっても、私にとっては大切な記憶だから。


 住み慣れた町でふと、すれ違う風に懐かしさを感じた。
 それに振り返ることなく、私は前を向いて進み続けた。