静かに目を開いた。時刻は明け方。

 夢を見ていたのに疲労感も眠気もない。ただ、すっきりとはしなかった。それはこの天気のせいだろう。
 私は布団から起き上がり、窓に近づいた。

 「雨だ」

 昨晩から天候が怪しかったから、こうなることも予想できた。
 いつから降っていたのか分からないけれど、大粒の雨が町を濡らしいてる。

 私は窓についた水滴が垂れていくのをしばらく眺めていた。

 「二分の一だもんな」

 水滴を内側から触れ、気だるげに呟く。
 お母さんが言うには、朝方にこの雨は止む。それもほんの少しの間だけ。
 不確かな夢で言われたことを私が勝手に信じるだけで、他の人を巻き込むわけにはいかない。やるなら一人でやらないと。
 雨音に飲み込まれそうになる意識を手繰り寄せる。
 考えたくはないけれど、もしものことがあってはいけない。

 我に返り、急ぎ足で机に向かう。
 ノートを一枚破ってペンを走らせた。
 最悪、私がここへ帰って来られなくなるようなことがあれば……そう思った私はメッセージを残した。

 途中、手が震えて文字が弱々しくなったり、涙ぐんで書けなくなることもあった。

 それでもなんとか最後まで書ききることができた。


 普段なら朝日が出ている時間。今は曇り空。

 手紙を折り込み、気づいてもらえるようにテーブルの真ん中に置いた。
 クローゼットからワンピースを取り出し、着替えて身だしなみを整える。鏡の前に立ち、最後にバレッタをつけた。

 クラネスさんが作ったエネルギー源は作業部屋にある。
 今日は自分の部屋で眠っているから、こっそり忍び込んで箱の前に置いてある原石を持ち出せた。
 そっと持ち上げて右手を下に、左手を側面に添える。

 家の中を歩いて移動し、クラネスさんの部屋の前に来た。
 本当は話すべきか悩んだ。きっと、なぜ相談しなかったんだと言われるだろうから。
 だけど答えは変わらなかった。

 私は小声で言葉を零す。

 「ごめんなさい。いってきます」


 外に出ると東の空に晴れ間が見える。雨は小降りになっていた。
 天候のせいか、外に出ている人はいない。

 軽く深呼吸をして前を見た。


 行こう。


 手の中にあるものを落とさないように、駆け足で向かった。

 雨上がりの空気は澄んでいて気持ちがいい。
 たまに水たまりを飛び越えたりしながら進む。
 聞こえてくるのは自分と足音と風の音だけ。
 何度も行き来したこの町が雨に濡れて、綺麗な星を纏っているように見えた。

 私、この町が好きだ。見える景色全部好き。
 出会えたみんなのことが好き。
 好きが詰まったこの場所を、私は一気に駆け抜けた。