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パーティーが始まると、店には沢山の人が足を運んでくれた。
今日の店ではバイキング形式でスイーツを並べているスペースや子どもが座って食べられる場所も設けている。もちろん大人も楽しめるようにお酒も用意してある。
「こんにちは、灯さん」
「エイトさん、来てくださってありがとうございます」
滅多に町に来ることはないと言っていたエイトさんが一番に声をかけてくれた。
「こちらこそ、お誘いありがとう。とっても素敵だね」
いつものように和装に身を包んだエイトさんが優しい笑顔を向けてくれる。
交友関係は広くないけれど、町の人たちのことを大切に思っている彼に少しでも顔を出してもらいたくて招待状を送っていた。
「なんだか、ここへ来た時よりも大人びて見える」
「え、そうですか?」
「顔つきが変わったからかな」
当初、俯くことが癖になっていた私の表情は暗かった。不安や恐怖を抱え、迷いがあった自分の気持ちに蓋をしていた過去。けれど、今は違う。
「今の私は、前しか見えていないようですから」
変わり続ける世界で後ろを向いてばかりでは道を見失う。下を向いていては置いていかれてしまう。追いつきたいなら、前を向くしかないのだと分かったから。
「頼もしいですね」
挨拶を終えた後、エイトさんはクラネスさんのところへ向かった。
そんな彼の背中を見つめていると、ワンピースの裾を引っ張られた。
「アカリ……」
そこにはアロくんがいた。ということは……。
入口の方へ顔を向けると、おひさま園のみんなが来ていた。
「お姉ちゃん!」
そう言って私の方へ駆け寄って来てくれた。
「アカリさん。今日はありがとうございます」
サイトくんを抱えたオルドさんが、みんなを連れて来てくれた。
パーティーの開催時間をお昼からにしたのは、子どもたちも参加しやすいようにしたかったから。
「いえ、楽しんでいただけると嬉しいです!」
小さめのテーブルとイスが用意してあるスペースにみんなを案内した。そこにはジュースとスイーツが並んでいる。
「わぁ!名前が書いてある!」
それぞれの席にはネームプレートを置いていた。名前の横にはイラストを描いている。
「すごい、可愛い!」
「よかったら持って帰って?」
「いいの?やった!」
ネームプレートならおひさま園でも使えると思って作った、私からのプレゼント。
みんな喜んでくれたみたいでよかった。
「あ!ジャラジャラの兄ちゃんだ」
席に着いた後、ガクくんが入口を指さした。
そのワードに思い当たる人は一人しかいない。
「リィンさん、来てくれたんですね」
私は挨拶をしに彼の元へ行った。
「あいつに少しくらい顔を出せと言われたからな」
視線の先にいたのはモモさんだった。
普段酒場に行かない私が行くんだからあんたも来なさいと説得されたらしい。
「ありがとうございます」
私は満足気に笑顔を向けた。
その顔に軽く舌打ちされたのは聞かなかったことにする。
「ジャラ兄、一緒に遊ぼ」
怖いもの知らずのライカちゃんが声をかけた。
「は?誰がお前らなんかと」
「え、兄ちゃん遊んでくれるの?」
子どもたちがリィンさんの元へ集まってきてしまった。
それを見た私は面白くなって思わず笑いながら言った。
「いいじゃないですか今日くらい」
「なんでだよ」
「今度クラネスさんがお酒奢りますよ」
少し黙り込んだ後、盛大なため息が聞こえた。
彼がなんだかんだで優しいお兄さんなのは分かっていた。だって、子どもたちから声をかけてしまうほどなのだから。
「あとでお酒持って行ってあげよ」
ここから離れたスペースに、お酒が飲める席もある。
楽しそうにしている彼らを見て、私は新しいパウンドケーキを焼くために一度キッチンへ戻った。
パーティーが始まると、店には沢山の人が足を運んでくれた。
今日の店ではバイキング形式でスイーツを並べているスペースや子どもが座って食べられる場所も設けている。もちろん大人も楽しめるようにお酒も用意してある。
「こんにちは、灯さん」
「エイトさん、来てくださってありがとうございます」
滅多に町に来ることはないと言っていたエイトさんが一番に声をかけてくれた。
「こちらこそ、お誘いありがとう。とっても素敵だね」
いつものように和装に身を包んだエイトさんが優しい笑顔を向けてくれる。
交友関係は広くないけれど、町の人たちのことを大切に思っている彼に少しでも顔を出してもらいたくて招待状を送っていた。
「なんだか、ここへ来た時よりも大人びて見える」
「え、そうですか?」
「顔つきが変わったからかな」
当初、俯くことが癖になっていた私の表情は暗かった。不安や恐怖を抱え、迷いがあった自分の気持ちに蓋をしていた過去。けれど、今は違う。
「今の私は、前しか見えていないようですから」
変わり続ける世界で後ろを向いてばかりでは道を見失う。下を向いていては置いていかれてしまう。追いつきたいなら、前を向くしかないのだと分かったから。
「頼もしいですね」
挨拶を終えた後、エイトさんはクラネスさんのところへ向かった。
そんな彼の背中を見つめていると、ワンピースの裾を引っ張られた。
「アカリ……」
そこにはアロくんがいた。ということは……。
入口の方へ顔を向けると、おひさま園のみんなが来ていた。
「お姉ちゃん!」
そう言って私の方へ駆け寄って来てくれた。
「アカリさん。今日はありがとうございます」
サイトくんを抱えたオルドさんが、みんなを連れて来てくれた。
パーティーの開催時間をお昼からにしたのは、子どもたちも参加しやすいようにしたかったから。
「いえ、楽しんでいただけると嬉しいです!」
小さめのテーブルとイスが用意してあるスペースにみんなを案内した。そこにはジュースとスイーツが並んでいる。
「わぁ!名前が書いてある!」
それぞれの席にはネームプレートを置いていた。名前の横にはイラストを描いている。
「すごい、可愛い!」
「よかったら持って帰って?」
「いいの?やった!」
ネームプレートならおひさま園でも使えると思って作った、私からのプレゼント。
みんな喜んでくれたみたいでよかった。
「あ!ジャラジャラの兄ちゃんだ」
席に着いた後、ガクくんが入口を指さした。
そのワードに思い当たる人は一人しかいない。
「リィンさん、来てくれたんですね」
私は挨拶をしに彼の元へ行った。
「あいつに少しくらい顔を出せと言われたからな」
視線の先にいたのはモモさんだった。
普段酒場に行かない私が行くんだからあんたも来なさいと説得されたらしい。
「ありがとうございます」
私は満足気に笑顔を向けた。
その顔に軽く舌打ちされたのは聞かなかったことにする。
「ジャラ兄、一緒に遊ぼ」
怖いもの知らずのライカちゃんが声をかけた。
「は?誰がお前らなんかと」
「え、兄ちゃん遊んでくれるの?」
子どもたちがリィンさんの元へ集まってきてしまった。
それを見た私は面白くなって思わず笑いながら言った。
「いいじゃないですか今日くらい」
「なんでだよ」
「今度クラネスさんがお酒奢りますよ」
少し黙り込んだ後、盛大なため息が聞こえた。
彼がなんだかんだで優しいお兄さんなのは分かっていた。だって、子どもたちから声をかけてしまうほどなのだから。
「あとでお酒持って行ってあげよ」
ここから離れたスペースに、お酒が飲める席もある。
楽しそうにしている彼らを見て、私は新しいパウンドケーキを焼くために一度キッチンへ戻った。