その数日後、私の希望通りスイーツパーティーが開催されることになった。
 場所はシュベルトさんの店。一日貸し切りで使わせてもらえることになった。

 「すみません、わがまま聞いてもらっちゃって」

 私は会場作りを手伝ってくれているシュベルトさんと話していた。

 「他でもないお嬢さんの頼みだからな。昼間からここが賑やかになるのも悪くない」

 普段は夕方からしかやっていない酒場。
 今日は誰でも気軽に入れるように内装を飾りつける予定だ。
 今まで関わってきた人はもちろん、町の掲示板にパーティーのことを書き込み、誰でも立ち寄れるようにしている。

 「ほんと、この短期間で町のやつらと打ち解けられるなんて。さすがだな」

 テーブルに並んだ食材を確認しながらシュベルトさんが言った。
 私がパーティーをやる話をしたら、町の人たちから果物や小麦粉などの食材を譲ってもらえたのだ。

 「それは皆さんのおかげです。私一人では何もできなかったと思うので」

 そんな感謝の気持ちを伝えるためにも、今日は皆に楽しんでもらいたい。


 「灯、バルーンはこのくらいでいいか?」

 装飾の用意を手伝ってくれていたクラネスさんが、カラフルな風船を持って出てきた。

 「ありがとうございます!あとで私たちが飾りつけておくので、クラネスさんは休んでいてください」

 告白の一件から何か変わったことがあるかと言われると、何もない。
 お互いの距離も変わることなく、私はいつも通りに接していた。



 「アカリー!」

 テーブルとイスを並べ終えた後、モモさんとヴァイトちゃんが一足先にやって来た。
 二人には店内の飾りつけを一緒に手伝ってほしいと声をかけていた。

 「私、こういうの初めてだから楽しみ!」

 三人で店内を風船やリースで華やかにしていく。
 モモさんとヴァイトちゃんは以前から交流があって仲も良く、一緒に話したいと思っていた。

 「それにしても、急にパーティーなんてどうしたの?」

 「まぁ、色々理由があって」

 感謝を伝える以外にも、この町の新たな出発をお祝いしたいという個人的な理由もあった。
 ヴァイトちゃんが特別な日にしかスイーツが食べられないと言っていたことをヒントに、今日のパーティーを企画した。

 「私はアカリのスイーツが食べられるならなんでもいい!」

 「ありがとう。嬉しいな」

 ヴァイトちゃんは私の作ったケーキを気に入り、自分でも作ってみたいからレシピを教えてほしいと言われ、いくつか紙に書いて渡していた。


 「あ……それ、いつもつけてくれてるわよね?」

 私の髪を見たモモさんがバレッタを指した。

 「これはモモさんがくれたお守りだから」

 つけているとモモさんがそばにいてくれているみたいで勇気をもらえた。だから、もらった日から肌身離さずつけている。

 「うぅ……アカリ!」

 涙目になったモモさんが抱きついてきた。
 これは、私にとって大切なものだ。

 「いいなぁ」

 「ヴァイトにも今度作ってあげるわよ」

 泣いてしまうのにはまだ早いのに、目元がじんわり熱くなってくる。今日は笑顔でいようと決めたんだから、笑え。


 二人のおかげで飾りつけはあっという間に終わった。
 時間の流れが早く感じるのは、終わってほしくないという気持ちの表れなのかもしれない。だけどまだパーティーは始まっていない。

 「私は用意があるので、二人はゆっくりしててください!」

 そう言ってキッチンに向かった。

 今日はスイーツの他にも軽食やドリンクも提供する。

 「スイーツはお嬢さんにまかせるな」

 「はい!」

 一度に沢山作れるクッキーやパウンドケーキ。モモさんの好きなガトーショコラに、ヴァイトちゃんが好きなベリーを使ったケーキはもちろん、様々なスイーツを用意する。
 当日は作業がスムーズにいくように、ある程度前日から仕込んでいた。

 エイトさんは和菓子が好きだと言っていた。以前家庭科で習ったいちご大福を思い出しながら生地を作る。
 リィンさんは甘いものが苦手らしい。そんな人のために甘さを控えたゼリーも。
 オルドさんからは、子どもたちが好きなドーナツのレシピを教えてもらっていた。

 「シュベルトさん、このチーズケーキどうですか?」

 「うん、美味いな」

 「よかったです!」

 シュベルトさんには味見をしてもらいながら好みを探っていた。
 クロムさんはなんでも食べられるから適当に作ってやれとクラネスさんに言われた。彼は誰かに作ってもらえるだけで十分なのだと。
 そんなクラネスさんには、他とは違うものを作りたいと考えていた。
 生地を作る手を止めて、今までお世話になったのだから当然だというのは建前で、心のどこかでまだ期待している自分がいるのだと気づいてしまう。

 「あの人なら、受け取ってくれるよね」