「足はどうだ?」
「もう大丈夫ですよ」
私は、元気になった足で跳んで見せた。
本当は昨日から平気だったけれど、念の為一日休んでいた。
その間に例のエネルギー源も形は完成したそうで、あとは私が歌うだけとなった。
「なんだか、思ったより小さいですね」
クリアシルクで作った天然水晶の中には歯車とネジを組み合わせたものが入っている。その周りで小さく光っているのはプラチナだろうか。
そして中心には赤く燃えている炎があった。
「これ、もしかして深紅石?」
「あぁ。少し手を加えて炎にした」
少しいじっただけでできるようなことではないと思うけれど。
「この炎は、一生消えることはない」
そう言って私の手に乗せてくれた。
クラネスさんの作ったエネルギー源は、両手に収まるサイズだった。
今あるエネルギー源は図書館の屋上にあり、遠くからでも見える大きなものだ。それと比べるとかなり小さい。
「灯が歌った後、唐打紐で水晶を結んで終了だ」
私が歌うのは、満月の日の前日。図書館の屋上で歌い、そのまま新しいものに取り替えるという流れだ。
「皆さん賛成してくれますかね」
そう言うとなぜかクラネスさんに頭を撫でられた。
「皆が好きになれる世界は作れない。どう考えても無理だ。だからと言って、立ち止まっているわけにもいかないだろ?一歩歩いて、進めたならそれでいい。だめだったら違うやり方を試せばいい。続けるということは、そういうことじゃないか?」
続く可能性を信じる彼らしい考えだった。
「俺にとってこの世界は変えたい存在だ。だが、灯に会わせてくれた場所でもある。好きでもなければ嫌いにもなれない世界だ」
そう話す表情は優しかった。
「じゃあ、新しい世界は好きになれるといいですね」
顔を上げて言った私の言葉にクラネスさんは「そうだな」と笑ってくれた。
この町で過ごせる時間も残り僅か。クラネスさんと一緒にいられる時間も……。
気づいてはいけない感情も顔を出している。寂しい。ここにいたい。できることなら、ずっと一緒に……。だめだ、そんな考えは捨てろ。
私は元の世界へ帰らなければならない。
いつもなら割り切れる思いに躊躇いがある。初めから分かっていたことなのに、自分が望んでいたことなのに。
誰かを好きになるって、こんなにも自分を見失ってしまうものなのか。
「満月の日も近い。何かやりたいことはあるか?」
お礼も兼ねて、できることは叶えてやると言われた。
やりたいこと。そう言われて一つだけ思いついたものがある。
最後にもう一度、会いたいな。
「私、パーティーをやりたいです!」
少ない時間で皆と会うには、一度に会える時間を作ればいいんだ。