それからヴァイトちゃんの好きな人の話になった。

 「クラネスはね、私のことをちゃんとヴァイトとして見てくれるから好き!あとモモちゃんもとリィンもそうだった!」

 そう話す顔には笑顔が咲いて、私も頷きながら聞いていた。
 ヴァイトとして見てくれるというのは、一人の女の子として相手をしてくれるということなんだと思う。クラネスさんはそれを分かっているから、抱きつく彼女を振りほどけない。

 「私は、私が好きな私を好きでいてくれるみんなが好きなの。もちろんアカリのことも好き!だから恋の応援するね!」

 突然の言葉にカップを持っていた手が止まり、むせてしまった。

 「えっ!?なんのこと……」

 あの時と同じ笑顔を向けて来た。
 ヴァイトちゃんの言う好きは恋愛感情ではないことは確かだ。それを分かった上で私に言ってきたということは、もうそういうことだ。

 「ヴァイト様には何でもお見通しなのだー!」

 楽しそうに笑みを浮かべる彼女はとても眩しかった。


 「アカリは、クラネスと一緒にこの町を変えるんでしょ?」

 クラネスさんから聞いていたのか、彼女は鉱石の使い道を知っていた。

 「ヴァイトちゃんは、この町が変わっても平気?」

 彼女は迷わず首を縦に振ってくれた。

 「町の在り方が変わっても、私が私でいられることには変わりないから。それに、この町も少しくらい変わった方が面白いよね!」

 そう言って私にも抱きついてきてくれた。
 彼女を見ていると私まで幸せになれるのは、選ぶ言葉やその明るさが母親と似ているからなのかもしれない。


 「アカリ、またね!」

 「うん!またね!」

 見送りに来てくれたヴァイトちゃんと、使用人に手を振った。

 そうだね。またねは、自分から迎えに行かないとだめなんだ。
 私にはこの世界での次がない。でも最後が分かっているから、今ある時間で何がしたいか決められる。