✾
「これは、やばいな」
灯の様子を見たシュベルトが水を持って来たが、手遅れだった。
「クラネス。今日はお嬢さん連れて帰れ。リィンは俺が送る」
「悪いな、任せる」
クラネスは眠ってしまった灯を背中に乗せて帰った。
外は日が落ちて、いつの間にか夜になっていた。店にいると、いつまでも明るい時間が続いている感覚になるため、時が経つのを忘れてしまう。
灯はクラネスの背中でスヤスヤと眠っている。夜風に当たると目が覚めるだろうと思っていたが、そうでもないらしい。
「いくらなんでも無防備すぎないか」
その声が灯に届くことはなかった。
無事家に着き、部屋へ入ると灯が目を覚ました。
「クラネスさん……」
その声はまだ寝ぼけている。またすぐに眠ってしまうだろう。
そっとベッドへ運ぶと、蕩けそうな目でこちらを見ていた。
「気分は悪くないか?」
念の為、持ってきた水を飲ませる。やはりまだ酒は早かったかと、行かせたことを後悔していた。
明日に響かなければいいが、と心配していると袖を引っ張られた。
その顔は俯いていて表情は見えない。
「クラネスさんは、優しいです。優しすぎます」
零れる言葉をただ聴くことしかできない。
「どうして怖いと言えと、言ったんですか。気にしてるなら言ってください。辛いなら、そう言ってください。……私だって、クラネスさんの、こと……」
それ以上言葉が続くことはなく、灯は眠ってしまった。
「……」
ただ何もない、静かな時間が流れる。
今のは寝言であってほしい。寝ていたとしても、どんな夢を見ていたらそんなことが言えるのか。
……。
今のことは覚えていなくていい。
服の袖を掴んでいた灯の手をそっと離し、クラネスは部屋を出た。
「これは、やばいな」
灯の様子を見たシュベルトが水を持って来たが、手遅れだった。
「クラネス。今日はお嬢さん連れて帰れ。リィンは俺が送る」
「悪いな、任せる」
クラネスは眠ってしまった灯を背中に乗せて帰った。
外は日が落ちて、いつの間にか夜になっていた。店にいると、いつまでも明るい時間が続いている感覚になるため、時が経つのを忘れてしまう。
灯はクラネスの背中でスヤスヤと眠っている。夜風に当たると目が覚めるだろうと思っていたが、そうでもないらしい。
「いくらなんでも無防備すぎないか」
その声が灯に届くことはなかった。
無事家に着き、部屋へ入ると灯が目を覚ました。
「クラネスさん……」
その声はまだ寝ぼけている。またすぐに眠ってしまうだろう。
そっとベッドへ運ぶと、蕩けそうな目でこちらを見ていた。
「気分は悪くないか?」
念の為、持ってきた水を飲ませる。やはりまだ酒は早かったかと、行かせたことを後悔していた。
明日に響かなければいいが、と心配していると袖を引っ張られた。
その顔は俯いていて表情は見えない。
「クラネスさんは、優しいです。優しすぎます」
零れる言葉をただ聴くことしかできない。
「どうして怖いと言えと、言ったんですか。気にしてるなら言ってください。辛いなら、そう言ってください。……私だって、クラネスさんの、こと……」
それ以上言葉が続くことはなく、灯は眠ってしまった。
「……」
ただ何もない、静かな時間が流れる。
今のは寝言であってほしい。寝ていたとしても、どんな夢を見ていたらそんなことが言えるのか。
……。
今のことは覚えていなくていい。
服の袖を掴んでいた灯の手をそっと離し、クラネスは部屋を出た。