同時刻、山の麓にある家を訪ねている者がいた。

 「全く、お前さんが何を考えているのか分からないね」

 「彼女のためですよ」

 一人は困ったように笑い、一人は飄々としていた。

 「そりゃまた酷なことするね」

 「真実を知らないまま過ごすよりもいいでしょう。……そう思いませんか?シュベルト」

 そう言って彼は視線を上げた。

 「その考えには同意だが、もう少しやり方ってもんがあるだろ」

 「この山には使われていない別荘があります。必要であれば帰れるまでの間、そこに居てもらって構いません」

 シュベルトはため息をついた。

 「クラネスもなかなかだが、お前さんも引けを取らないな、エイト」

 「私は真実を話すということを条件に彼女をこの町へ迎え入れることを許可したのですよ」

 月明かりに照らされて地面に映る影もまた、人の形をしていなかった。