時刻は午前二時。
目の前には月明かりに照らされた道が続いている。
静まり返る町の様子に多少の薄気味悪さが漂っていて、行きたくないと直感的に感じた。
騒ぐ心臓を、深呼吸をして無理矢理落ち着かせる。
――よし。
小走りで住宅地を抜ける。
図書館があるのは町の端。
『午前二時から一時間、クラネスは家を空けます。その隙に図書館へ行ってください。入口にいる警備員には話した通り鍵を見せるのです』
昼間に聞いたエイトさんの話を思い出す。
クラネスさんが家を空ける理由は知らないし、本人からも聞いていない。
外出する時はメモを残すと言っていたけれど、さすがにこんな夜中に私が起きているとも思わないだろうな。
バレたら謝ろう。