「初めまして、私はエイト・フォローワです。クラネスとは友人で」
「腐れ縁だろ」
エイトさん相手にめんどくさそうに話しているクラネスさん。朝市で見た時とは態度が違い過ぎる。これは相当仲が良いんだろうな。
そんな二人の会話を横目に、私は縁側から見える庭園を楽しんでいた。
入口からここまで来るのに通った敷石、その周りには役木と呼ばれる庭木や低木、下草などが植えられていた。その中には石燈篭もあり、趣のある景色が広がっている。
地元にも庭園を楽しめる観光スポットはあるけれど、普通の家にあるものでこれほどまでに立派な庭園を見たのは初めてだ。
生まれ育った町のせいか、こういった場所は嫌いじゃない。
吹き抜ける風が心地良い。目を閉じると、どこからか水の流れる音が聞こえてくる。
コトン……。
竹が石を叩く時に鳴る独特な音。
心を落ち着かせるその音に目を開いた。間違いない、これは鹿威しだ。
町の広場には噴水、山の中には鹿威しって、さすが異世界。頭がこんがらがってきた。