広場を抜けて、再び住宅地へと足を踏み入れる。
 そこは人通りも少なく静かな道だった。

 「あの、これどこに向かってるんですか?」

 朝市を見て終わったら帰るものだと思っていた。
 今向かっている先にあるのは大きな山。町の中心から少しずつ離れている。

 「山の(ふもと)に住んでいるやつのところだ。一応この町で一番偉いやつだから、挨拶くらいしたいだろ?」

 一番偉い人、町長さんみたいな感じかな。

 「偉い人って普通、町の方にいないんですか?ほら、山とは反対側にあるあの建物とか」

 そう言って私は遠くに見える大きな建物を指さした。
 見るからに高そうなあの建物は、この町で最も目立っている。私がいた町では見たことがない造りだ。
 山とその大きな建物の間には住宅地が広がっている。
 向こうが都会ならこちらは田舎だ。それくらい同じ町でも差がある。

 「あの建物は、この町にとって重要な場所だ。沢山の本がある」

 本ということは図書館。言われればそんな感じもするけれど。
 お偉いさんの家よりも重要な場所だと聞くと、かなり気になる。
 建物の屋上に目をやると、何やら光っている大きな球体のようなものが見えた。

 「まぁ、いずれそこにも連れて行ってやろう」

 思っていることを読まれたのか、私の顔を見たクラネスさんは笑っていた。