次の日の朝、目覚めると同じ部屋にいた。これは紛れもなく現実だ。

 そして昨日言っていた町案内をしてくれることになり、クラネスさんと広場に来ていた。

 「わぁ、すごい!」

 住宅地を抜けた先にあった光景に目を輝かせた。
 中央には噴水。それを囲むように広がっていたのは、カラフルなテントの下に並ぶ野菜や果物、花や雑貨など様々な品。
 朝市をやっているから出かけるなら午前の方がいいと勧められて来てみたけれど、想像以上だ。

 「毎朝こんな感じなんですか?」

 「そうだ。気になるものがあれば見てみるといい」

 昨日とは打って変わって足取りが軽く、テンションの高い自分がいた。
 この町の雰囲気だけでもフィクションのようだというのに、こんな市場まであるなんて夢のようだ。
 物騒な町だったら……という不安もあったけれど、ここにいる人たちを見ていると穏やかな町という印象だった。


 「あら、見かけないお嬢さんね。クラネスさんの知り合いかい?」

 果物屋の前を歩いていると声をかけられた。

 「まぁな、可愛いだろ?」

 「はっ!?」

 不意に言われた可愛いに反応して声が裏返った。

 「これ採れたてのイチゴなんだけど買ってくかい?安くしとくよ」

 「それはありがたい。あいつの所にも持っていくか」

 私の隣でクラネスさんは果物屋の女性と楽しそうに話している。

 赤く色づいたイチゴは甘くて美味しそう。この人が作ったのかな。
 よく見ると、この町は山に囲まれている。日当たりもいいし、野菜や果物を育てるには良い環境なのかもしれない。

 「おーい!クラネス!珍しい機材が入ったんだ。よかったら見て行ってくれ!」

 向かいの店から飛んできた声を機に、次から次へとクラネスさんへ声がかかり、気づいた時には人だかりができていた。

 「以前依頼した枕、本当に凄いわ!おかげで毎晩ぐっすりよ。それでね、もう一ついいかしら?話をしたらお隣さんも欲しいって言って」

 「分かりました。では後日受け取りに来てください。二、三日あれば完成しますので」

 同世代の平均身長よりも背が低い私は完全に埋もれていた。頭上で誰が何の話をしているのか分からない。
 私はクラネスさんの横で愛想笑いを振りまいていた。