青花は、ますます壊れそうな表情になって、震えた声で問いかけてきた。
 なんでだろう。どうして、伝えてしまったんだろう。
 自分でも分からないけれど、今、その三文字以上に言うべき言葉が見つからなかったんだよ。
 青花が好きだ。……好きだ。
「青花に生きていてほしいって思うのは、こっちの勝手だよな……」
 眉を下げながら苦笑交じりにつぶやくと、青花は困惑した顔になる。
「ほんと……だよ……」
 力なく答える彼女の手を、俺はそっと握り締める。
 もう春なのに、冬の朝のように、青花の手は冷たい。
 俺は、もう大切な人から逃げたくない。わがままでも何でもいいから、思っていることを全部伝えようと思って、彼女の瞳をまっすぐ見つめた。
「でも、生きていてほしい。青花に、生きていたら見られる景色を、たくさん目に焼きつけてほしい。人と同じ時間の流れを過ごして、生きていく道を探してほしい」
「禄……」
「できれば俺もその隣に、いれたらいいけど……」
 青花の澄んだ綺麗な瞳が、複雑そうに揺れている。
 これは俺の、どうしようもないほど勝手な考えだ。
 彼女の負担になることを承知で、本音を伝えた。
 青花が目を覚まさなくても、同じ世界にいる。そうやって、自分が心強くいたいだけなんだろう。
 でも、それでも。
「何年かかっても、病気に振り回されない世界で輝く青花を、見てみたいんだ……」
 いろんな言葉を並べたけれど、不安になって、思わず謝ってしまった。
 とうとう自分の目からも、涙があふれ出る。
 どこまでも勝手で無力な自分に、嫌気がさす。
 悲しい。降りやまない雪のように、切なさだけが降り積もっていく。
 この悲しみが消えてなくなることなんて、あるのかな。
 青花の手を握りながらうつむいて泣いていると、そっと背中に体温を感じて、気づいたら青花の腕が回っていた。
 俺をそっと抱き締め震えながら、青花も一緒に涙を流している。
「うぅっ……」
 胸の中から聞こえてくる嗚咽に、自分の涙腺も崩壊した。
 ……どうして、青花だったんだろう。
 どうして神様は、青花にこんなに試練を与えるんだろう。
 やりきれなくて、悔しくて、悲しくて悲しくて悲しくて、仕方ない。
 今を生きたい。たったそれだけの願いが、夢のように遠い。
「青花が目覚めたときに楽しめるゲーム、たくさん作っておく」