休み時間になると、安藤の席の周りに女子が群がった。何時も教室で見てきた光景なので、それ自体は何とも思わなかったが、隣の席になってみて、改めてこの集団が如何に邪魔であるかを痛感した。
「ねー、夏樹くん。今度みんなで海行こって話してんの。一緒に行かない?」
「っていうか、今日帰り暇? 遊びに行こうよ」
わいわいがやがや。次の授業の支度をしている穂南のすぐそばで、安藤に群がる女子の煩いこと煩いこと。おまけに安藤を取り囲んだ女子の体が穂南の席の机を圧迫して、彼女たちがきゃははと笑うたびに机がガタガタ揺れた。その拍子に机の上に置いていたペンケースが落ちて、カラカラとシャーペンが転がる。
「あー、ごめん」
その謝罪の言葉は、机を揺らした女子ではなく、安藤から穂南に向けられた。一応自分の所為だという自覚があるのか。そう思っていたら、「川崎さんの邪魔になるから、廊下行こ」と女子たちを誘って教室を出て行った。
(いつものことなんだから、最初っから廊下に行っててくれればいいのに)
廊下から女子たちの甲高い歓声が聞こえる。煩い、と思った。