──2年生進級まで残り数ヶ月となった、中学1年生の冬。
私たちの日常は、急速に変わり始めた。

海外でなんだか大変そうなことが起きてるなぁ、なんて思いながらニュースをぼんやりと眺めていたはずが、あっという間に世界が混乱に呑み込まれていって、学校生活も様変わりしていく。

延期され、規模を縮小して、例年とはプログラムも大きく変わった体育祭。
テーマパークに行く予定もあって楽しみにしていた修学旅行は、県を跨がない小規模なものに変更になった。

……正直なところがっかりした。
だって、2つ上の先輩たちが、楽しそうに修学旅行から戻ってきていたのを見ていたし、私たちにも同じような時間があると思っていたから。

だけど、仕方ないと諦めもついた。
誰が悪いというわけでもない。私たちはもちろん、先生や親たちだってどうしようもないことだから。


日常が変貌してからの約2年の中学時代は、「どうして私たちだけ」という思いと、やり場のない悲しさや虚しさや怒り、そして諦めの感情を行ったり来たりしていたような気がする。

そんなわけで、思い出の少ない中学生活はあっという間に終わり、卒業の日もなんだかあっさり迎えてしまった。

同じ高校に進学する友達はほぼいないから、仲が良かった子たちと離れ離れになってしまうのは寂しかったけれど。
それでも、涙は出なかった。



変わってしまった日常も、3年目ともなればもうすっかり慣れたものだ。

私は、ほとんどのクラスメイトの顔をきちんと見たことがない。
逆も同様で、マスクを外した状態で話したことがあるのは、中学からの友達である栞くらいだ。

しかし、顔をちゃんと見たことがないからといって、別に、日常生活に不便は感じない。


それどころか……いつしか私は、この日常にある種の安心感と心地よさを抱くようになっていた。