鳴海はクラスのアリスカフェのウエイトレスの順番を終えた由佳と一緒に中庭に来ていた。中庭の中央ではバスケ部の青空舞台が繰り広げられていて、そこそこ賑わっていた。その隅で、鳴海は由佳に話し掛けた。

「私さあ……、ずっと由佳に言ってないことがあったんだよね……」

ちらり、と由佳の反応を見る。由佳は首をこてん、とかしげて、鳴海の様子を見た。ああ、かわいい。クロピーにでろでろになってる梶原には絶対もったいないけど、さっきの梶原はかっこよかったから、それだけでも由佳に釣り合うと思う。

「なあに? 大事なこと?」
「……うん。……私、梶原と付き合ってることに、なってるじゃない?」
「? うん? 急でみんなが驚いたよね。でも、今では学校中の皆が知ってるよね」
「うん、それなんだけどさ……」

言っちゃって、良いかな。でも、言わないと絶対、梶原が後悔するよね……。鳴海は腹をくくって口を開いた。

「それ、さ……。嘘なの」
「……? …………え……?」
「お互いに事情があって、付き合ってるふり、してるの……。でも、由佳には、言っておかないと、後悔するなって思ったから……」

後悔? と由佳が問うた。

「……私に、……嘘ついてたってことを? でも、事情があったんでしょ? 二人にしか分からない事情なら、私が知らなくても仕方ないし、そのまま隠してることも、出来たんじゃないの……?」

確かに事情があった。でも、今、その前提が崩れようとしている。

「うん、確かに事情があったの。でも、梶原が変わって来てるから、それなら、もう隠してる必要、無いかなって思って……」
「? ……分からないけど……。……でも、私にだけ、言う理由があるのね……?」
「……うん」
「じゃあ、私も他の誰にも言わない。秘密は、三人で守っていこうね」

にこっと、由佳が笑った。由佳の、相手に誠実であるところ。こういうところ、好きだなあ……。そして、きっと、梶原も、そう言うところに気が付いたから、好きになったんだろうな、と思ったら、親友を誇らしく思った。