※※※※※※※※※
俺の髪の毛は他の人とは違うってよく言われていた。
小学校に通ってからも言われ続けた。
こんな田舎の学校で「みんなと違うから」という理由でいじめられていた。
「お前の髪の毛なんでそんなに白っぽいんだよ。変なの」
「お前だけ仲間はずれ」
「お前は髪の毛変だから仲間に入れてあげない」
と、みんな俺のこの髪の色を嫌った。
味方をしてくれるのは家族だけだった。
泣いて帰ってくる俺を母さんは毎回「ごめんね」と言って抱きしめてくれた。
毎日が嫌だった。学校に行って仲間はずれにされるのが。その度に母さんが泣くことも。
自分には耐えられないくらい辛かった。
6月、梅雨の大雨が降りカエルが大合唱を奏でている中、俺は1人で傘を刺さずに俯きながら歩いていた。
持ってきた傘が隠されていたのだ。
田舎でコンクリートの道なんて学校周辺にしかないようなとこだから、靴とズボンはドロドロになっていた。
きっとこのまま帰ったら母さんはまた自分を責めてしまう。
そう考えるだけで家へ向かう足が止まった。
どんどん強くなる雨の音が俺を嘲笑う声に聞こえて地面に出来た水溜まりを力いっぱい踏んずけてみるがやってみても自分の無力感でいっぱいになるだけですぐに辞めた。
しばらくそこへ蹲り泣いていると後ろから走ってくるような足音が聞こえた。
後ろを見ると今まで見たことの無い人だった。俺と同じ位の身長の子だった。
「大丈夫?どうしたの?」
「…大丈夫なんでもない」
この子にまでこと髪の毛が気持ち悪いと言われるのが嫌だったから近づいて来る子を手で押しのけ、来ていた青色パーカーのフードを被った。
フードはたっぷり雨水を吸収し、俺の頭はさっきの何倍までにも重たくなった。
「傘さしなよ。僕のあげるから」
その子は笑顔で自分が濡れることも気にせず僕に傘を差し出した。
だけど、それほどまでに優しい子にまた、僕の髪色を否定されるのが怖くてその子から逃げようと走った。
その子のあの優しい心に直接語りかけてくるような笑顔が学校の皆みたいな顔に染まるのを見たくなかった。
もう誰にも自分を否定されたくなかった。
家とは全然違う方向だったがただひたすら走った。
水を吸った服が鉛のように重かったがそれも気にならないほど走った。
でも、その子は俺を追いかけてきた。
明らかに俺より遅いしドロドロの地面を走ることに慣れてない子が息を切らしてまでずっと俺のことを追いかけてくるからついに立ち止まってしまった。
「なんでついてくるんだよ!お前には関係ないだろ?」
そう怒りを露わにするように言うとその子は至極当然のような顔をして言った。
「だって、君が悲しそうにしてたから」
そう言って傘をもう一度差し出してくる。
もうお互いびしょびしょだというのに。
髪からも服からも俺の背負っているランドセルからも水滴が滴り落ちる中、僕は彼の優しくて吸い込まれそうな…初夏の快晴のように爽やかで見ていて心地よい目をじっと見つめていた。
そうしているといつの間にか雨が止み、雲から光が差し込んでくる。
俺たちのいる場所にもスポットライトのように光が落ちてくる。
「あれ、君の髪の毛…」
そうその子が言いかけると雨の重さで今にも頭から落ちそうだったパーカーのフードが彼に指摘されたことで動揺した拍子に頭の後ろまで落ちてしまいあの化け物のような白の髪の毛が露わになる。俺は咄嗟に頭を手で隠した。そんなので隠れるわけがないというのに。
それほどもう嫌だったのだ「みんなと違う」と言われることが。
ところが君は差し込んでいる光よりも。
僕らにあたるスポットライトよりも眩しい笑顔で言った。
「君の髪の毛きれいだね!透き通ってて宝石みたい」
その言葉が俺には衝撃的ですぐに受け入れられることができなかった。
「でも、みんな俺はみんなと違うって…普通じゃないって…」
「普通じゃなくてもいいじゃん君の髪は他のみんなよりもきれいだよ!」
その言葉にどれだけ救われたことか。
俺が嫌いで憎くて仕方がなかったこの髪を「きれい」と言ってくれて。普通じゃなくてもいいと言ってくれて。
その子は手を上に向け雨が降ってないことを確認すると踵を返しさっきまで走ってきた方向へ体を向けた。
「もう、傘いらなくなったね。じゃあ、僕おじいちゃんと兄ちゃんが待ってるからもう行くね」
そう言って走ろうとするその子に涙が出そうになるのを止めて焼けたように熱い喉から出るガラガラな声で叫んで問いかけた。
「ねぇ、名前は!!」
その子は走りながら後ろを向いてクシャッとした最高の笑顔で叫んだ。
「颯馬!」
颯馬。苗字は聞けなかったけどその名前は絶対に忘れないと胸に誓い、これでもかと言うほどスポットライトの当たったあの場所で1人で泣いた後に家に帰った。
母さんはびしょびしょで目を赤く腫らして帰った俺を見てまた泣いた。
「ごめんね、私がこんな色の髪の毛で産んでしまったから…」
そう言ったがその時は自信満々に答えれた。
下ではなく前を向いて。
「大丈夫!俺のこの髪の色は他の子よりもきれいだから!!」
それから俺は前向きな性格になった。
下を向いてても意味が無いことに気がついたから。
そうするといじめてくる子も気にならなくなり人も寄ってくるようになった。
そして、人からの親切は受け取るようにした。
颯馬君の「親切」を受け取らずにいたら。
颯馬君が俺を「親切」で追いかけてこなかったら俺はこんなに明るくなれなかったから。
学校のみんなに仲間外れにされたままで母さんを泣かしてしまう日々が続いていただろうから。
「親切」には出会いがあるんだと信じるようになった。
それから中学生になり颯馬という名前をだけを頼りに颯馬君を探した。
かなりの田舎だから僕が人を探していると聞くとみんなが協力してくれた。
まずは学校の人に聞いてみた。
今まで僕のことを仲間外れにしていじめてきた奴も僕の話を真剣に聞いて家の人や近所に拡散してくれた。
そして、みんなのしてくれた行動がついに実を結び颯馬君のおじいさんを見つけることができた。
それを伝えに来てくれた男の子はいつもチャイムギリギリで来るような子なのにいつもより数十分も早くに走って学校に来てくれて僕が教室に入るとワッと盛り上がり興奮した様子で教えてくれた。
この時はクラスの全員が「夏海良かったな!!」
とか颯馬くんのおじいさんを見つけた子に
「よくやった!!」と肩を組み頭を豪快にわしゃわしゃとみんなで撫でていた。
放課後僕はすぐに颯馬くんのおじいさんの家に向かった。
すると、颯馬君は帰省していただけでここには住んでいないことを教えて貰えた。
颯馬君に救われたことを話すとおじいさんは「あの子は優しい子じゃ」と誇っていた。
そして、通っている学校を教えてもらい母さんへ転校したいと話してみた。
母さんは今まで僕に苦労をかけていたのは自分のせいだと責めていたから僕がやりたいと言い出したことを応援してくれた。
そして、中学を卒業し、おじいさんから高校を聞き出し入学した高校から颯馬君がいる学校へ転校した。
彼にお礼を言いたくて。
彼の力になりたくて。
俺の髪の毛は他の人とは違うってよく言われていた。
小学校に通ってからも言われ続けた。
こんな田舎の学校で「みんなと違うから」という理由でいじめられていた。
「お前の髪の毛なんでそんなに白っぽいんだよ。変なの」
「お前だけ仲間はずれ」
「お前は髪の毛変だから仲間に入れてあげない」
と、みんな俺のこの髪の色を嫌った。
味方をしてくれるのは家族だけだった。
泣いて帰ってくる俺を母さんは毎回「ごめんね」と言って抱きしめてくれた。
毎日が嫌だった。学校に行って仲間はずれにされるのが。その度に母さんが泣くことも。
自分には耐えられないくらい辛かった。
6月、梅雨の大雨が降りカエルが大合唱を奏でている中、俺は1人で傘を刺さずに俯きながら歩いていた。
持ってきた傘が隠されていたのだ。
田舎でコンクリートの道なんて学校周辺にしかないようなとこだから、靴とズボンはドロドロになっていた。
きっとこのまま帰ったら母さんはまた自分を責めてしまう。
そう考えるだけで家へ向かう足が止まった。
どんどん強くなる雨の音が俺を嘲笑う声に聞こえて地面に出来た水溜まりを力いっぱい踏んずけてみるがやってみても自分の無力感でいっぱいになるだけですぐに辞めた。
しばらくそこへ蹲り泣いていると後ろから走ってくるような足音が聞こえた。
後ろを見ると今まで見たことの無い人だった。俺と同じ位の身長の子だった。
「大丈夫?どうしたの?」
「…大丈夫なんでもない」
この子にまでこと髪の毛が気持ち悪いと言われるのが嫌だったから近づいて来る子を手で押しのけ、来ていた青色パーカーのフードを被った。
フードはたっぷり雨水を吸収し、俺の頭はさっきの何倍までにも重たくなった。
「傘さしなよ。僕のあげるから」
その子は笑顔で自分が濡れることも気にせず僕に傘を差し出した。
だけど、それほどまでに優しい子にまた、僕の髪色を否定されるのが怖くてその子から逃げようと走った。
その子のあの優しい心に直接語りかけてくるような笑顔が学校の皆みたいな顔に染まるのを見たくなかった。
もう誰にも自分を否定されたくなかった。
家とは全然違う方向だったがただひたすら走った。
水を吸った服が鉛のように重かったがそれも気にならないほど走った。
でも、その子は俺を追いかけてきた。
明らかに俺より遅いしドロドロの地面を走ることに慣れてない子が息を切らしてまでずっと俺のことを追いかけてくるからついに立ち止まってしまった。
「なんでついてくるんだよ!お前には関係ないだろ?」
そう怒りを露わにするように言うとその子は至極当然のような顔をして言った。
「だって、君が悲しそうにしてたから」
そう言って傘をもう一度差し出してくる。
もうお互いびしょびしょだというのに。
髪からも服からも俺の背負っているランドセルからも水滴が滴り落ちる中、僕は彼の優しくて吸い込まれそうな…初夏の快晴のように爽やかで見ていて心地よい目をじっと見つめていた。
そうしているといつの間にか雨が止み、雲から光が差し込んでくる。
俺たちのいる場所にもスポットライトのように光が落ちてくる。
「あれ、君の髪の毛…」
そうその子が言いかけると雨の重さで今にも頭から落ちそうだったパーカーのフードが彼に指摘されたことで動揺した拍子に頭の後ろまで落ちてしまいあの化け物のような白の髪の毛が露わになる。俺は咄嗟に頭を手で隠した。そんなので隠れるわけがないというのに。
それほどもう嫌だったのだ「みんなと違う」と言われることが。
ところが君は差し込んでいる光よりも。
僕らにあたるスポットライトよりも眩しい笑顔で言った。
「君の髪の毛きれいだね!透き通ってて宝石みたい」
その言葉が俺には衝撃的ですぐに受け入れられることができなかった。
「でも、みんな俺はみんなと違うって…普通じゃないって…」
「普通じゃなくてもいいじゃん君の髪は他のみんなよりもきれいだよ!」
その言葉にどれだけ救われたことか。
俺が嫌いで憎くて仕方がなかったこの髪を「きれい」と言ってくれて。普通じゃなくてもいいと言ってくれて。
その子は手を上に向け雨が降ってないことを確認すると踵を返しさっきまで走ってきた方向へ体を向けた。
「もう、傘いらなくなったね。じゃあ、僕おじいちゃんと兄ちゃんが待ってるからもう行くね」
そう言って走ろうとするその子に涙が出そうになるのを止めて焼けたように熱い喉から出るガラガラな声で叫んで問いかけた。
「ねぇ、名前は!!」
その子は走りながら後ろを向いてクシャッとした最高の笑顔で叫んだ。
「颯馬!」
颯馬。苗字は聞けなかったけどその名前は絶対に忘れないと胸に誓い、これでもかと言うほどスポットライトの当たったあの場所で1人で泣いた後に家に帰った。
母さんはびしょびしょで目を赤く腫らして帰った俺を見てまた泣いた。
「ごめんね、私がこんな色の髪の毛で産んでしまったから…」
そう言ったがその時は自信満々に答えれた。
下ではなく前を向いて。
「大丈夫!俺のこの髪の色は他の子よりもきれいだから!!」
それから俺は前向きな性格になった。
下を向いてても意味が無いことに気がついたから。
そうするといじめてくる子も気にならなくなり人も寄ってくるようになった。
そして、人からの親切は受け取るようにした。
颯馬君の「親切」を受け取らずにいたら。
颯馬君が俺を「親切」で追いかけてこなかったら俺はこんなに明るくなれなかったから。
学校のみんなに仲間外れにされたままで母さんを泣かしてしまう日々が続いていただろうから。
「親切」には出会いがあるんだと信じるようになった。
それから中学生になり颯馬という名前をだけを頼りに颯馬君を探した。
かなりの田舎だから僕が人を探していると聞くとみんなが協力してくれた。
まずは学校の人に聞いてみた。
今まで僕のことを仲間外れにしていじめてきた奴も僕の話を真剣に聞いて家の人や近所に拡散してくれた。
そして、みんなのしてくれた行動がついに実を結び颯馬君のおじいさんを見つけることができた。
それを伝えに来てくれた男の子はいつもチャイムギリギリで来るような子なのにいつもより数十分も早くに走って学校に来てくれて僕が教室に入るとワッと盛り上がり興奮した様子で教えてくれた。
この時はクラスの全員が「夏海良かったな!!」
とか颯馬くんのおじいさんを見つけた子に
「よくやった!!」と肩を組み頭を豪快にわしゃわしゃとみんなで撫でていた。
放課後僕はすぐに颯馬くんのおじいさんの家に向かった。
すると、颯馬君は帰省していただけでここには住んでいないことを教えて貰えた。
颯馬君に救われたことを話すとおじいさんは「あの子は優しい子じゃ」と誇っていた。
そして、通っている学校を教えてもらい母さんへ転校したいと話してみた。
母さんは今まで僕に苦労をかけていたのは自分のせいだと責めていたから僕がやりたいと言い出したことを応援してくれた。
そして、中学を卒業し、おじいさんから高校を聞き出し入学した高校から颯馬君がいる学校へ転校した。
彼にお礼を言いたくて。
彼の力になりたくて。