数年前のものなのか、那央くんの髪型が違って、服装の雰囲気も若い。駅前でヒステリックに叫んでいた彼女は、那央くんの肩に頭を寄せて、穏やかな表情で幸せそうに微笑んでいた。

 彼女とは結構長い付き合いなのかな。こんなに仲良さそうなのに、どうしてケンカになったんだろう。ふたりの、というよりも、写真の中の那央くんの笑顔を見ていると、胸が切なくなってくる。

 勝手に見なければよかった。複雑な気持ちで、写真立てを元の場所に戻そうとしたとき、金具が緩んでいたのか、裏板が外れてしまった。

 ガタッと、フレームが倒れる音が響いて焦る。写真立てからズレてはみ出してしまった写真を戻そうとして、ドキリとした。

 那央くんが彼女と写っていた写真の下に、もう一枚、別の写真が重ねてあったのだ。そこに写っている那央くんは、最初に見た写真の彼よりもさらに若い。

 高校の卒業式のときのものだろうか。黒の学ランを着た那央くんが、卒業証書の筒を持った手でピースサインをして笑っている。彼の隣にいるのは、目がクリッとした、清楚で可愛い雰囲気の制服姿の女の子。だけどその子は、今の那央くんの彼女ではない。雰囲気はすごくよく似ているけれど、まったくの別人だ。