写真を撮られたとき、わたしは義父である彼と、レストランで食事をしてきた帰りだった。看護師をしている母が夜勤で家を空けるので、学校帰りに待ち合わせをして、ふたりで外食をしたのだ。

 彼とふたりで過ごす時間は、とても楽しかった。楽しくて浮かれすぎたわたしは、じゃれつくフリをして、彼に腕を絡めてくっついて歩いた。

 彼はそれを、義理の父親へのスキンシップだと純粋に捉えて疑ってもいなかっただろうけど、それは違う。

 わたしは、自分のことを少しでも女の子として意識してもらいたいという打算で、彼にくっついていた。

 彼はわたしのことを義理の娘としか思っていないだろうけど、わたしは彼を父親だと思ったことは一度もない。

 わたしは母が彼と再婚する前から、密かにずっと、桜田 健吾に恋焦がれている。