行き場をなくしたわたしは、駅に向かってとぼとぼと引き返した。そのまま家に帰る気分にはなれなくて、駅前にあったハンバーガーショップに入る。
ナゲットとコーラを買って空いている席に座ると、スマホで動画サイトを開く。
コーラを飲みながら検索したのは、那央くんに海に連れて行ってもらった夜に車の中でかけた男性アーティストの曲。店の中だからボリュームを最小限に絞って、最新曲のミュージックビデオを再生する。
画面の下に流れていく曲の歌詞を眺めながらわたしが思い出していたのは、誕生日の夜に浜辺で頭を撫でてくれた、手のひらの温もりだった。