「ねぇ、那央くん。どうして、好きになった人が自分を好きになってくれる可能性は、みんなに平等じゃないのかな」
「まだ平等の話を考えてたんだ」
「だって、どう考えても不公平だって思うから。その人を好きって思う気持ちには代わりがないはずなのに、両想いになれるのはひとりしかいなくて。それって宝くじに当たるみたいなラッキーで。それ以外の人はみんな、悲しい思いをするんだよ」
「だけど、恋愛なんてそういうもんじゃん」
「そういうもん、か」

 那央くんがハハッと軽く笑って、砂浜にすとんとお尻をおろす。わたしは打ち寄せてくる波を見つめてしばらくジッと考えてから、ゆっくりと口を開いた。

「わたし、健吾くんのことが好きなんだ。父親としてではなく、恋愛感情で」

 わたしの隣で、那央くんが息を飲みこむ。突然の告白を聞かされた彼は、困っているのか引いてしまったのか。何も言わない。

 だけど、適当に躱されたり、冗談にして笑われたりするよりもずっと良かった。

 仲の良い友達にすら打ち明けられなかった。健吾くん本人にすら、誤魔化してはぐらかされそうになったわたしの気持ち。

 那央くんがそれを黙って受け止めてくれただけで、抱えていたものが少し軽くなった気がする。