「あー、ワンピース汚れちゃう」
「どんくさ」

 砂浜に両手と膝をついているわたしを見下ろして、那央くんが揶揄うように笑う。

「うるさいなー」

 不貞腐れた声でつぶやくと、お尻をついて座って砂浜に足を投げ出す。

 今夜のために買った、ちょっと高めのワンピース。そのスカートに濡れた砂が付いたけど、もうどうでもよかった。腰の後ろで手をついて、ため息を吐く。

 首を反らして星の少ない夜空を見上げていると、那央くんが歩み寄ってきてわたしの隣にしゃがんだ。

「何があったかは知らないけど、少しは気が晴れた?」

 三角に立てた膝の上に腕をのせた那央くんが、横から顔を覗き込んでくる。優しい瞳をして見つめられて、気が晴れたというよりは、つい気が緩んだ。