今日の夕飯は、肉じゃがと豆腐のお味噌汁、それからほうれん草の胡麻和えという和食メニューだ。
健吾くんがわたしの母と再婚してそろそろ半年。一緒に生活するなかでわかったことは、健吾くんが洋食よりも和食派だということと、特に肉じゃがが好きだということだ。
看護師として働いている母は、六年前に父を亡くしてからずっと、わたしを一人で育てるために頑張ってくれていた。わたしが料理を覚えようと思ったのは、少しでも母の役に立ちたかったからだ。
最初は簡単なものしか作れなかったし失敗ばかりだったけれど、本やインターネットでレシピを調べて試行錯誤を重ねるうちに、気付けば母よりも料理がうまくなった。
今では料理することが習慣になってしまっていて、朝食と夕食は毎日わたしが作る。それが特別なこととは思っていなかったけれど、母が再婚して三人暮らしになったときに、健吾くんがわたしの料理を絶賛してくれた。
『沙里のメシは、俺が今まで食べてきた手料理の中で一番おいしい』
健吾くんにそんなふうに褒められて以来、わたしは母と二人暮らしのときよりもずっと気合いを入れて料理をするようになった。
健吾くんが、わたしの作ったものを嬉しそうに食べてくれると嬉しかった。