バスケというスポーツはチームプレーだ。考え方をシフトしよう。

「ドッジボォォォォォオオォル!」
「おう!」

 これは中学の時によく哲也とやっていたおふざけの延長線。初めてこれを伝授した時には、学武も真斗も大林も「こんなの試合で使えねぇ」と鼻で笑っていたけれど、何度か実践していくうちに、この戦術を好んだ。
 どんな術かと説明するまでもない。ドリブルを使わずただただ強い豪速球で、我がチームのリングにボールを通すだけ。ただしカットは許されない、1本勝負。

「真斗ぉ!」

 コート外からの哲也のボールは、まずは真斗の手に渡る。すかさず真斗に近寄ったディフェンスが思わず()けてしまうほどのスピードで出されたボールは、次の大林へ。

「大林!」
「学武!」

 受け取ったボールをミリ秒として所有せず彼が学武へ送ったところでコートの半分まできた。学武は長身を活かしたオーバーヘッドパスで、俺へと(たすき)を繋ぐ。

「修斗!」

 それをキャッチした瞬間に放るは、ドッジボール作戦開始直後から全速力で反対側まで駆けてきた哲也の60センチほど前。あとはもう、彼に託す。

「哲也ぁ!」

 ボールにちょうど追いつきキャッチした哲也は、嫌いな芸能人でも描かれているのかというくらいの勢いでそれをリングに叩きつける。ダガンッ!と大きな音がすれば、ポイントゲット。

「すっごーい!」

 真那花の()の声が、最初にした。

 32対45。第3クオーターはここで終了。