──別れとはその人の価値を知らせるものである。


 当時の野球部は僕を含めて十三人だった。今はどうなのか知らないけれど。

 夏休みなんて、運動部にはない。

 毎日毎日、理不尽に怒られ、バカにされ、それでも一年間続けれていたのは理由がある。

 それは、三年生の先輩たちが僕を侮辱(ぶじょく)する先輩に僕へ向ける怒りを最小限に抑えていてくれていたからだと今では思う。

 しかし、その先輩たちはもう引退。

 彼らの中学校の野球選手生活最期(さいご)の勇姿は僕のせいで散っていった。

 そう、僕らは負けた。

 主に、僕のエラーによって。

 僕の守備位置は右翼手(ライト)だった。

 自分自身、試合にでれるのならどのポジションでも大丈夫だったのでそこにいたのだけど。

 ライト方面に流し打ち連発の始末。僕はゆるいフライにさえ対応できず。

 ゴロはトンネルの地獄。やっとの事で攻守交代になればベンチで例の先輩に説教される始末。

「なんのためにお前は居るんだよ! なんにも出来ないならこのチームからいらない!」

 この時の僕は、すぐに辞めてしまうのは邪道だと思っていたからごめんなさいとひたすら謝ることしか出来なかった。

 試合には負け、三年生の先輩たちは僕の事を庇ってくれていたものの、それは先輩とアイツを調子づける事となった。

 ここからが、後悔の始まり。これは、夏休みがもうすぐ終わりを迎えようとしているある日の出来事である。