レクリエーション大会の時間がやって来た。

 僕らは楽しみながらも、緊張していた。

 クラスの人気者たちのダンスを見たり、女子のダンスを見たり、クイズ大会で盛り上がったりした。

 時間を忘れるほど楽しい時間だった。

 そして、二十二時。

 幕を下ろす前に盛り上がってほしい、心の底からそう思う。

 誰か一人でもいいから、どうか、心の底から楽しんでほしい。

 コッソリと裏舞台へ足を運んだ僕らは、アコースティックギターのチューニングを終え、声だし。

 舞台では爆音と自ら作成したプロモーションビデオが鳴って裏の声が聴こえないようにしている。

「本当に来たんだね」

 バンド仲間は、出会った頃のように緊張していた。だけど、あのときと違うのは眼鏡の奥の(よど)んだ瞳が輝いている事だ。

 そして、僕も変わった。

 アイツと、あの子を傷付けて、自分も傷ついた。

 今から歌う九十年代の曲は彼らに心の中で宛てて歌うものでもあるんだ。

「……うん。でもさ、僕らきっと大丈夫。過去を乗り越えてきたからね」

 バンド仲間にも、辛い過去があったのを僕は知っている。

「さぁ、いこう」

 僕らは舞台に飛び出す。

 このとき、この瞬間だけ、僕は根暗な「僕」じゃなくてアーティストとしての「僕」だ。

 歓声が耳を貫く。

 それも沢山で、温かいものばかりだ。

「皆さんこんばんはー! 早速歌います!」

 歓声が心に響く。

 単音をバンド仲間と合わせる。

 手拍子と歓声は止まない。

 自分が出せる最高の歌声とギターテクニックを披露する。

 格好をつけようなんて思わない。格好をつけたいとも思わない。僕が僕である証明を。最低だったあの日から成長した証を見せつけた。

 一曲目は終わった。

「アンコール!」

「「アンコール‼」」

 誰かが言ったその声は徐々に広がり、大きくなっていく。

「アンコール、ありがとうございます! この曲です。どうぞ」

 その曲は世界にオンリーワンの花だ。

 その歌は動画付きで修学旅行の準備風景が写し出されていた。

 僕が知らない、いつ誰が撮ったのかあの日の野球の写真や僕やバンド仲間を中心にした写真や動画が多くあった。

 きっと、編集作業の早い先生のサプライズなのだろう。

 僕らは、最後の最期まで弦を弾くピックに想いを込めながら歌った。

 僕らのライブは最高の幕を閉じて終わった。

「あー、楽しかった!」

「うん。楽しかった。時間って長いようで短いね」

 僕らは興奮しながらも、睡魔には勝てずに寝てしまった。

 この日々ももうすぐ終わってしまうのか。