「高校は、どこに行くかちょっとは決めた?」

 担任の女先生は夏の懇談会のときにそう言った。

 近年の懇談会では昔のように必ず出来ないとか無謀(むぼう)だと罵倒(ばとう)するのはしてはいけないらしい。

 僕はそれなりに自分がいける高校を選んで、そこに見事合格したから本当によかった。

「商業高校に行きたいです。資格があれば、仕事にも困らないので」

 僕はそうハッキリと告げた。

 高校生活に別に期待はこのときも今もしていない。

 恋は高校の間はしないつもりでいるし、別に部活動にも入らないつもりでいたから、これからのAIによって仕事が奪われると言われている社会に対する耐性は付けていくつもりでいた。

 商業、経理の仕事ならAIに取られないし、公務員とかになれば生涯安泰だ。

「なるほど。そこの高校なら君の学力的にも安定しているから現状行けそうだね。でもここからだから頑張ろう」

 落ちたらシャレにならないから。

 僕はそれなりな覚悟は決めた。

 野球部に入っていた時のような何かを犠牲にしてでも成し遂げる気持ちは消えていたが、人として成長するためにも頑張るつもりだ。

 受験生に青春はないなんて親は言うけれど、僕にもう青春は来ない。

 これで最後なんだ。

 高校に行っても青春は来ず、小説を書く日々が続くだけ。

 僕はそれが好きだからやる。

 青春最後の夏の覚悟を僕は決めた。