中学校三年生の始まりの四ヶ月間は、今猛威(もうい)をふるっているウイルスによって、強制的に白紙と化した。

 自粛(じしゅく)期間に僕は考えた。

 今のこの考えが僕を(つく)っていると言っても過言(かごん)ではない。

 僕は、野球部から離れる際に誰も傷付けないと言った。

 だが、結局はあの子を傷付けてしまった。

 彼女は心の傷を負ってか、あれから、学校に来なくなる日が多くなった。

 今では傷付けたという後悔が僕の心を支配しているものの、高校の国語教師のある言葉によって、少しずつ後悔を浄化していっている。

 その言葉のひとつが、

『忘れるんじゃない。後悔を受け止めてあげるんだ。傷付いたけどその分手に入れた能力は大きい』

 という言葉が僕を成長させてくれている。

 まぁ、このとき僕はそんな言葉をかけてくれる人は居なかったから新たな人生の目標を決めていた。

 《傷付けない・傷付かない》

 という人生の目標を定め、最後の一年こそ誰も傷付けない日々を送る。普通の人なら当たり前のことだ。でも、人生のレールはふとした瞬間に外れることがある。それを僕は誰よりも知っている。

 それでよかったのかなんて今の僕には、分からない。

 だけど、僕は最後の一年の過去に満足している。

 最後の物語は、これから始まる。

 空白から始まる最低の物語。

 これは、他人を傷付けてしまった僕が、一度はどうでもいいと全てを投げ捨てた人間が、過去への償いとまだ諦めていない輝く未来を目指す後悔の物語だ。