悪事千里を走る。

 悪い行いや悪い話は、たちまち世間に知れ渡ると言う意味だ。

 人の悪い(うわさ)もそんな感じでたちまち流れ、広まる。

 僕のストーカー疑惑は、学年中に広がった。

 親友には、していないという事を話して、彼はそれを信じてくれている。

 「そっか。嫌な噂だな。俺はこれから別に詮索(せんさく)もなにもしない。俺はいつも通りにお前と接するよ」

 そう言ってくれて本当に心が楽になる。

 だが、クラスでは、女子からのヤバイ奴という冷たい視線が集まる。

 バンド仲間は僕をチラチラと見るも、一歩を踏み出せず、机の上で固まる。

「あの子が可哀想。本当にヤバイわ~! クソかよ」

「マジクソ野郎よな。なに思い込んでんの? アイツ」

「……さいってい」

 人は、すぐに(てのひら)を返す。分かっていた。アイツのときみたいに、なにかが起きればこうなることは。

 僕は、彼女らの中ではもう最低のクソ野郎なのだ。

 結局人は、思い込みでその人の全てを決める。

 あの子には、人が寄ってきて、(なぐさ)めの言葉をかける。

 僕には、冷酷(れいこく)な視線と陰口だけが心に刺さる。

 こんな事になるくらいなら。

 ……君と出会わなければよかった。

 一緒に帰らなければよかった。

 恋なんてしなければよかった。

 あぁ、僕は最低だよ。

 それがどうした?

 怒りにも似たその感情はきっと開き直りなのだろう。

 僕は、最低だよ。

 もう、恋なんてどうでもいい。

 全てがつまらない。

 このときから、僕の視界から少しずつ光がなくなっていった。