恋は盲目(もうもく)

 人は、恋に落ちると理性や常識を失ってしまうという意味だ。

 僕も、そうなった一人であり、そのせいであの子の笑顔も、彼との友情もなくなった。

 もし、盲目じゃなくて。

 ちゃんとした距離感であの子と居れたら。

 僕らはまだ友達でいれたかな?

 ***

『僕と付き合ってください』

 メッセージアプリに、そのひと言が浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返している。

 いつになったら、この気持ちを消化できるか分からなくて。

 数時間後、僕は送信ボタンをタップした。

 この想いが届く事を願って。

 願って、願って、願っ……たはずなのだけど。

 想いを伝えたのにも関わらず、心が苦しかった。

 翌日。

 朝一番、親友が開口し、放った言葉は、僕の耳をすり抜けて、心に刺さった。

 「お前、ストーカーしてんのか?」

 えっ?

 「あの子が言ってたぞ。アイツはストーカーだって。彼氏も話を聞いてるから確からしいけど、どうなんだ?」

 すとー、かー?

 何を言っているんだ。

 やめて、くれよ。

 そんなに(おび)えた目で僕を見るのは。

 言葉が、心に刺さった。

 それは、何よりも痛くて、辛くて、まるで、鋸挽(のこぎりびき)をされているような感覚だった。

 一気に殺してくれない。

 授業が始まってから、誰も僕に近寄ろうとしない。

 見たくなくても席の加減で見えてしまうあの子の(うつむ)いている横顔がただただ苦しかった。