人生は取捨選択(しゅしゃせんたく)の連続だ。

 どちらか一方を選ぶなら、片方を犠牲にしなければいけない。

 もし、その片方を選べば、どんな未来が待っていたのだろうか。

 僕には、中学二年生の夏頃から彼女と呼べる存在が出来た。

 その子は、ひとつ下の後輩の女の子で、笑顔が似合う子だった。

 その子とは、塾が一緒で良く二人で帰っていた。

 そのときから僕はあの子の事が好きだったから、彼女は正直に言うと、眼中になかった。

 けど、向こうから告白されれば、少しは気にする。

「先輩、私と付き合ってください」

 そう言われ、僕は返事に困った。

 他の好きな人がいるのに、付き合っていいのだろうかと少し考え、数日後に僕とその子は付き合う事になった。

 それを、親友に話すと、秒速でバラされ、少し本気になって怒った。

 でも、親友のおかげでこれから救われるのだから、なにも言えない。

 僕はこのとき、中途半端な気持ちで付き合っていたから、結局年が明ける頃には別れる。

 どうして本気にならなかったのかと今でも少しへこむときがある。

 彼女にも、あの子にも申し訳ない。

 そして、ここからきっと歯車が噛み合わなくなったのだろう。

 自身の彼女という存在を捨て、好意をあの子に向けた。

 ちょうど、あの子がその頃にいた彼氏と別れたという会話を何度目かの帰り道に聞いたからかも知れない。

 もし、僕が彼女という存在を捨てなかったら。

 この未来はなかったのだろうか。